- 戦略的人事にITを活かす - 人材・組織システム研究室
第一回目で、1998年(前後2年)に起きた、人事の「断層」について、考えてみた。 今回は、そこから10年を経た2008年(前後2年)に、「経営」「人事」「現場」それぞれで見られた変化、そしてこれから人事が直面していくであろうことを考えてみたい。
日々の人事部訪問のメモを基に、この10年の企業経営で気になった変化をまとめてみた。次に、「人事」の世界では、どんなに変化が見られたのか整理してみたい。
「アグレッシブからアサーティブへ」
まず、この10年で大きく変わった、と感じているのが、人事部長のタイプだ。前回のコラムで書いたが、1998年の頃の人事部長というのは非常にアグレッシブな人が多かった。
企業は、バブル崩壊の直後、一刻も早く総額人件費削減を行わなければならなかった。そこで、現場との調整など考えずに、とにかくトップからの至上命令を時間内に完遂することに邁進できる人が人事部長となっていた。
しかし、ここ10年に人事部長になった人たちは、アグレッシブではなく、アサーティブな人が多い。相手の立場や権利を認めつつ、自分の意見をさわやかに確信を持って主張でき、現場との調整が上手くできるタイプだ。
株主のために利益を上げていく攻めの経営を、多様化する現場で遂行していくことが求められるようになって、人事部長がトップからの意向を一方的に押し付けてくると現場に感じさせてしまうことはマイナス、と認識されてきたのだろう。
人事の役割が、経営からの意向を上から下に浸透させるのではなくて、経営と現場をつなぐパイプ役が求めらることになってきたということで、本来の人事のあるべき姿に戻ったと言えるかもしれない。
「人事専任部隊の復活」
ある日、久しぶりに会った人事担当者が「楠田さん、名刺が変わったんですよ」と言って名刺を差し出してきた。見ると、昔は「総務人事部」所属だったのが、「人事部」となっている。別の機会で会った他社の人事担当者も、所属が以前の総務人事部から人事部に代わっていた。
どうして人事部復活なのか聞いてみたら、「これからは、『人』のことだけを考える組織をつくらなければ駄目だということに、経営が気ついたからだ」という。
それから意識して観察してみると、人事部門に人員を増やし始めている企業が多いことがわかってきた。
人事総務部とまとまっていると、人事分野の担当者であっても、株主対策関連の業務を手伝うことになることも少なくないという。特に総会関連ではそれなりの役割を任されてしまう。
一方で、内定者のフォローも含めて採用活動は長期化し、社員のメンタルケアの問題など、後回しにしておけないような「人に」関わる仕事は増加している。株主はもちろん大事だが、良い人が採れない、社員が十分に力を発揮しないというのは経営上由々しき問題だ、ということで、株主は総務に、人は人事に、と組織として明確な切り分けをした上で、人員の強化をしているということらしい。
第八回 これからの人事部のあり方 〜 新たな人事の役割を考える
第六回 成功するコーポレートユニバーシティ・失敗するコーポレートユニバーシティ