- 戦略的人事にITを活かす - 人材・組織システム研究室
第一回、第二回と、1998年から現在まで、人事をめぐって起きてきたことについて整理をしてみた。 そこで今回は、これからの人事に何が求められているのか、人事担当者はどういったことを考えていかなければならないのかについて、考えてみたい。 しかし、単なる理想論を掲げても、「できればいいよね」といった絵に描いた餅になってしまう。 そこで、今回は、ある総合電機メーカーの人事マネージャーが作成した「これからの人事」についての考え方を基に2006年頃から多くの企業の人事の人たちと行ってきた研究会で議論してできあがったものの抜粋を提示しよう。
まず基本となる3つのビジネスリテラシーについて考えてみたい。
人事担当者に必要なビジネスリテラシー
1. 人事の専門能力
2. ITビジネス能力
3. ソリューション能力
1. 人事の専門能力
これからの人事は、「今いる人材をいかに活用して企業の成功に結び付けるのか」とか、「ボーダレス化・多様化する労働力にどう対応していくのか」などといった経営課題に応えていくことが期待されている。
そうした状況で、人事担当者が「日本の労政・法律に詳しい」というだけでは不十分だ。
人事担当者は、まず、人材開発・育成、組織行動、組織開発についても理解を深めていく必要がある。
また、海外進出をする、もしくは外国人を採用することが視野に入っているのであれば、借り物ではない世界観を身につけることも肝要になってくるだろう。
人事の専門能力を狭義に捉えるのではなく、人事として経営に貢献していくために必要な専門性や知識は何か、という発想が必要となってくる。
2. ITビジネス能力
経営に関わる部署の一員として、「人事だから数字やデータに弱い」という言い訳は、もはや許されなくなっている。
何が必要な情報なのか、それらをいかに収集するのか、収集したデータをどのように分析・加工するのか。そうした、「情報リテラシー」が、これからの人事担当者には求められている。
3. ソリューション能力
経営層に対して「ソリューション」を提供できるための力、が必要になってくる。
それは、
・ 現場で実際に起きていることを知りたいという要求に応える。
・ トップが現場に伝えたいと思っていることを、現場が理解できるように伝える。
・ 変化、多様化する従業員の労働観や働き方を伝える。
など、経営が「人」に関して必要としていることにタイムリーに応えていく能力だ。
そのためには、人事部の中で起きていることだけではなく、社会の流れ、現場の現状などを常に勉強していくことが大前提だ。
次に、それを支える資質について考えてみる。
第八回 これからの人事部のあり方 〜 新たな人事の役割を考える
第六回 成功するコーポレートユニバーシティ・失敗するコーポレートユニバーシティ