- 戦略的人事にITを活かす - 人材・組織システム研究室
このコラムも、残すところあと2回となった。そこで、今回は、ここ数年多くの企業の人事部に話を聞くなかで、ある特定の会社や業界に限らず見えてきたトピックスを、アトランダムに紹介したい。最終回では、これらを受けて、これからの人事部が考えていかなくてはいけないポイントをまとめていきたいと思う。
正確に統計を取ったわけではないが、2007年以降の株主総会以降、人事に人を増やす企業が増えているように感じている。バブル崩壊後、管理間接部門の縮小化でアウトソーシングが進んだが、人のマネジメントという本質的な部分については、これ以上人を減らしていては大変なことになる、と考える企業が増えたということではないか。
日本人の労働力は減少していき、海外との競争はますます激しくなっていくなかで、「人」をどう活かしていくかは、企業にとってますます重要な戦略のひとつになるはずだ。今後、人事部が戦略的に動けるようになるか否かは、企業の将来に大きな影響がでてくるだろう。闇雲に人を増やせばいいという話ではないが、もし単に管理部門としての人事の縮小化・コスト削減だけに囚われているとしたら、他社のこうした傾向に注意を払った方がいいのではないかと思う。
ある経営者と話をしていて、「楠田さん、人材開発はやっぱりOJTが基本だよね。だから、うちの会社の教育も基本的にOJTでいこうと思っている」と言われたことがある。その会社の現場に足を運んでみると、「OJTという名の野放し」になっていた。まるでサファリパーク状態。半分冗談で、「あそこで長いことライオンさんが寝てませんか?」と言いそうになった。
そういった企業は、意思を持って「OJTで教育をする」と言っているのではなく、「教育・研修にかけるお金がない」ということをストレートに言えないから、建前として「うちの教育方針はOJTだ」と言っているだけということが多い。だから、機能しない。もちろん、OJTはとても重要なことだけれど、組織構造の階層が減ってフラット化する傾向が強まる中で、以前のような縦型のOJTが機能しづらくなってきている現状を忘れてはならない。本気で、OJTによる教育を実践しようと思ったら、単にマニュアルを作って配ってもダメだということを認識する必要があるだろう。
第八回 これからの人事部のあり方 〜 新たな人事の役割を考える
第六回 成功するコーポレートユニバーシティ・失敗するコーポレートユニバーシティ