- 戦略的人事にITを活かす - 人材・組織システム研究室
このコラムも、残すところあと2回となった。そこで、今回は、ここ数年多くの企業の人事部に話を聞くなかで、ある特定の会社や業界に限らず見えてきたトピックスを、アトランダムに紹介したい。最終回では、これらを受けて、これからの人事部が考えていかなくてはいけないポイントをまとめていきたいと思う。
グループ人事管理をする企業が増えるなかで、悩んでいる人事担当者も増えている。
あるホールディング会社の人事に新卒で配属されて数年経った人事担当者が、相談にやってきたことがある。「楠田さん、事業会社の人事部に行って話を聞きたいのだけれど、どうしたらいいかわからない。アドバイスがほしい」という。「どうやってアポを取ったらいいですか?」「何を聞けばいいでしょう?」と質問は続いた。
他のホールディング会社の若手人事担当者に、「事業会社の人事の人たちを訪ねたりしないの?」と聞いたら、「え、何をしに行くんですか?」と逆に質問されたことがある。「でも、同じグループだし、どうして行かないの?」と更に聞くと、「だって、名刺が違いますから」と言う。
2000年に連結決算の考え方が入ってきて、グループ会社管理も10年が経とうとしている。確かに「カネ」の部分は連結したのだけれど、人事のエリアになるとほとんど進んでいないのが現状だ。人事交流があるのは、役員人事レベルくらい。やっと、グループ間人事交流をしようと動き出している会社が出てきているが、そもそも相手の会社の人事を知らないし、文化や風土もわからない。
もともと、伝統的な日本型企業の人事はあまり現場に出ることがなかった、という風土も影響しているのだろう。現場に出ていかなくていいように詳細な制度を作って、あとは好きに使ってください、という感じだ。それに加えて、人事の分野にもMBO(目標管理制度)が導入されるようになったので、ますます制度づくりに精を出す人事が増えて、現場から遠ざかっていく。
そんな風に、自社内でさえあまり外に出ていく経験を持たない人事にとって、突然、グループ会社とはいえ実質はまったくの「他社」に積極的に出向いていくことはハードルが高いに違いない。
しかし、昨今、競合が必ずしも同業他社とは限らないというビジネス環境の下、グループ間交流を進めていく意義はある。人事も積極的に関わっていくべき分野だろう。
最近になって、「女性活躍推進室を作りたい」とか、「早急に複線型人事を作らなければならないのでアドバイスがほしい」といってくる企業がある。それも、少ない数ではない。正直いって、今頃そうしたことを考え始めているとしたら、「周回遅れ」だ。問題が大きくなってから行動を起こそうとしているわけで、完全に「モグラ叩き」状態になる。
そういう企業の人事を見ていると、外のとの交流には消極的で、制度設計などもコンサルティング会社に丸投げしていたりして、情報が絶対的に不足している。
そういう企業は今から頑張って、できるだけ早く周回遅れを取り戻して、先手を打っていく人事になるよう努力するしかない。そのあたりの具体的な話は、次回のコラムで整理してみたい。
(2010年2月)
第八回 これからの人事部のあり方 〜 新たな人事の役割を考える
第六回 成功するコーポレートユニバーシティ・失敗するコーポレートユニバーシティ