第八回 これからの人事部のあり方 〜 新たな人事の役割を考える

前回、今人事部で起きていることの中で、気になっていることを8つほど挙げた。それを受けて、今回は、これからの人事部が考えていくべきポイントを挙げたいと思う。

科学的視点・数値化の視点

従業員がほとんど正社員、特に大卒男子で占められていた時代、しかも経済は成長を続け、企業が課長部長というポストを潤沢に提供できていた時代が終わったことは、誰もが実感し認めるところである。この新しい世界での就労側の価値観は、どんどん多様化している。女性や外国人といった多様性だけではなく、かつて一枚岩として扱われた大卒男子の中でも、その就労意識の幅は広がっている。もはや、会社に忠誠を誓って、家族やプライベートのことを後回しにし、週7日24時間を会社のために使う用意のある正社員をベースに人事施策を考えていればいい時代ではなくなった、ということだ。

そんなことはわかっている、と思うかもしれない。しかし、実際の日々のマネジメントをみていると、新しい状況に対応できてない企業が多いように思える。そもそも、現状を把握できていないのではないか、と感じるからだ。

人事は、従業員の状況を、数値に基づいて、科学的に読み解いていく必要があるだろう。

例えば、360度評価や社員満足度調査などを実施する企業が少なくないが、1年実施しただけで満足してしまったり、もともとは継続するという意図で始めたのに新しいトップが来て突然中止にしてしまったりするといった企業が結構ある。これでは、従業員が何を考えていて、どういった施策をとっていけば元気に活躍してくれるのか、きちんとわかるわけがない。

自社の人材を様々な角度から、数値に基づいて棚卸しし、その結果を分析してマネジメントにつなげていく。これからの人事が本当の意味で経営に貢献していくための大事な機能になると考えている。

採用を根本的に見直す時期が来ている

最近、採用プロセスを見直したいとか、改善したいという相談を受けることが増えてきた。

昨今の採用プロセスは、いわゆる二大就職サイトへ学生がエントリーすることから始まることが多い。例えば5000人のエントリーがあった会社の説明会には、だいたい2000人くらいの学生が足を運ぶ。会社は参加者を適性検査などで、5分の1くらいに絞り込む。これで400人。そしてその中から更に絞り込んで、実際に採用するのは50人程度。つまり、最初の接触人数から考えると、約100分の1。4550人を「不採用」にしているわけだ。果たして、落としてしまった4550人の中に、最終内定者以上の「金の卵」はいなかったと言い切れるのだろうか。

そういった疑問に追い討ちをかけるように、それだけ厳選したはずの人材を現場に出してみると、現場から「いったい誰が採用したんだ?」といったクレームを受けたりする。もっとひどい話になると、配属先を言い渡した次の日に辞表を提出したりする。

これについて、即効性のある明快な解決策は、今すぐには考えられないが、ひとつ参考になる話がある。

多くの企業を訪問していて、「不思議だ」と思っているのは、採用時に使用するアセスメントと、管理職昇進や昇格のアセスメントがまったくリンクしていない企業が本当に多いということだ。そのつながりが見えなかったら、将来、自社でどういう人が活躍して、どういう人はダメなのかということを、どうやって判断するのだろうか。

それに気がついたある企業で、45〜50歳の部長クラスを、採用時に使用しているアセスメントで評価したことがある。すると、活躍している人と、活躍できていない人の特徴のパターンが確実に存在したという。その後その企業では、どんなに有名大学出身で、面接で素晴らしいことを言っても、実際の調査で活躍できないパターンに入る人は採用しないようになった。

本当に会社にとって必要な人を採用しようと思ったら、それくらいのスパンで、科学的に考えていく必要があるだろう。

採用プロセスを見直したいということであれば、そういったところから手をつけるのが、結果的には早道で、成果を出せるのではないかと思う。

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過去のコラム

第八回 これからの人事部のあり方 〜 新たな人事の役割を考える

第七回 人事部をめぐるトピック 8 

第六回 成功するコーポレートユニバーシティ・失敗するコーポレートユニバーシティ

第五回 これからの人材開発部門はどうあるべきなのか?

第四回 戦略人事のあり方の視点

第三回 これからの人事 〜 求められる人事担当者像とは? 〜

第二回 日本の人事の転換点 2  2008年(前後2年)

第一回 日本の人事の転換点1 1998年 (前後2年)

破壊と創造の人事

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