第7回 Talent Managementの正体とは?

前回でも申し上げましたが、2007年10月10日から12日までの3日間、HR Technology2007という、世界最大級の人事とITをテーマにしたコンファレンス+展示会が開催されました。

しつこくて申し訳ありませんが、初めての方のために再度。

Talent Management花盛り!

前回は、「人事とデータ」というテーマについてお話をさせていただきましたが、今回は「Talent Management」についてお話したいと思います。

このコンファレンスには2003年にも参加したのですが、そのときのメモに「これからはTalent Managementが注目される」と書いてありました。

そして今年。

コンファレンスに参加してみると、「Talent Management」という言葉を見たり聞いたりしないで過ごすことが難しい、というくらいの状況になっていました。

たとえば、6種類のカテゴリーに分かれて、毎日並行して開催されるセミナー。

そのひとつのカテゴリーが、まるまる「Talent Management」に当てられています。

また、カテゴリーの一つは「Strategic View」といって、特にホットな話題を扱うものでしたが、そこでも5つのうち、2つのセミナーが「Talent Management」を取り上げていました。

展示会に足を運べば、人事システムを販売しているメジャー企業のほとんどのブースに「Talent Management」の文字。

アメリカの人事業界の中では、避けて通れない話題になっているのを肌で感じました。

Talent Managementとは? − 人事部にとっての意味 ―

さて、では「Talent Management」とはいったい何なのでしょうか?

私が3日間でセミナーに参加し、展示会で実際のシステムのデモを見て感じたのは以下のようなことです。

「従業員の『能力』を総合的に把握し、それを活用することを保証する仕組み」

(当のアメリカでも、その定義はまだ確定していないという意見が多いようです。たとえば、It was only after the dot-com crash that people
started talking about employee commitment and talent management. Today, these terms still are not well-defined.” by Dr. Jac Fitz-Enz. November 2007)

ではなぜ、このことが重要なのかと言えば、

「自社の持つ『能力』『才能』を、どれだけ効果的かつ効率的に活用していくことができるのかが、企業間の競争を勝ち抜く重要なポイントになる」

という認識があるからです。

そのために、人事部は

「採用、人材配置、評価、目標管理、コンピテンシー、昇進、教育・研修、報酬制度といったあらゆる人事プロセスを、統合して管理する必要がある。」

これが実現して初めて、「Talent Management」が実現すると考えられています。

なぜならば、

人事業務のプロセスは、往々にして、個々の業務にプロセスとしての構造的な共通点がないために、ばらばらに行われていることが多いからです。

それは、決してビジネスのためにはならない、と。

たとえば、採用の成否を単にその年の目標採用数に対する達成率だけでみていないでしょうか。

本当の成否は、その人たちが3年後5年後に、会社の成功に貢献しているのかどうか、のはずです。

採用と評価作業、教育。そして退職関連業務は相互連携をもって行われているでしょうか?

また、「人材配置」(人事異動)は?

その異動や組織編成が、本当に組織と個々人のために役立つものだったのか。

経営者であれば知りたいところです。

人事にかかわる人たちは、採用担当なら採用だけを、教育・研修担当であれば従業員の育成だけを考えるのではなく、「人材」(能力・才能)を切り口にして統合して管理・活用する(「辞めさせない」も含め)、という発想を持つことが必要だ、というのがTalent Managementのひとつの側面だと言えるでしょう。

Talent Managementは人事部だけの問題か?

さて、ここまでは「人事」ということだけで話を進めてきましたが、そもそも会社の中で「Talent」を「Management」するのは人事部だけの仕事なのか、という問題にぶつかります。

答えは当然ながら、否、です。

日々、人のマネジメントを行っているのは現場のマネジャーである、「能力」「才能」を実際に活用しているのは、従業員一人一人です。

これは、特に「Talent Management」をシステム(IT)でサポートしようと考えるときに顕著になるのですが、

「そのシステムは、人事部の所有物ではなく、経営者を含めて、会社の成功のために働く人全員のためのもの」

という認識を忘れないことがとても重要になってきます。

人事部が、「人材」(才能・能力)を切り口に統合的に動き、その結果として、現場のマネジャー、従業員一人一人、そして経営がそれぞれの立場で、

「一人一人の『能力』を最大限に発揮して、企業を成功に導くために日々活動する」

ことができる仕組みをどうやって作り、維持・向上させていくのか。

そのために、人事が何ができるのか、そんな視点も、Talent Managementの重要な側面と考えられています。

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「Talent Management」という、まだまだ定義やその実際の落としどころが確定していない言葉について、私が理解した範囲で簡単にお話させていただきました。

この中のひとつでも、皆様の何かのヒントになれば幸いです。

私はと言えば、「Talent Management」をシステム(IT)を活用してどのようにサポートしていくことができるのか、が2008年の課題となりました。

次回は、シカゴ報告(4)として、「人事とシステム」についてのお話をさせていただきたいと思います。

(2007年11月22日)

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