- 戦略的人事にITを活かす - 人材・組織システム研究室
「え、まだこんなところにいるの・・・ 別ルートなんて通らなければよかった」
以前、空港に車で急いでいるとき、いつも通る道が混んでいたので、少し距離は長いかもしれないけれど信号
がほとんどないからと、勧められた別ルートを走ったことがありました。
そして、元の道に戻ってきたとき、想像していた地点よりもあまりに手前までしか移動できておらず、非常にがっ
かりしたのを鮮明に覚えています。
それ以来、私は自分が通ったことのないルートを使うことを基本的に避けるようになりました。
あるお客様が「○○○という形式のシステムの導入には非常に慎重になっています」と言われているという話を
同僚から聞いたことがあります。以前、そうした形式のシステムと導入したときに、営業担当者が「できる」
と言っていたことで、できないことが多く、対応も導入が決まった瞬間に豹変し、非常に不愉快な経験をしたよ
うです。だから、もうこりごりだと。
この話を聞いたとき、自分自身の経験も合わせて、「ひとつの失敗の一般化」の功罪について考えさせられまし
た。もちろん、ひとつの失敗の経験をもとに、次に失敗しないように備えるということは賢明な態度です。
しかしその反面、ひとつの失敗のみを基に、「別ルートを試してみる」とか「○○○というシステムを導入する」と
いった行為自体をすべて排除してしまうことは、自らの可能性を狭める、と感じたのです。積極的な挑戦の結
果の失敗のときには、特に。
空港へ急いでいる時の問題は「別ルートを通る」ことではなく、「別ルートのことをよく知らなかった」ことです。シ
ステム導入の問題は、一般的なシステムの形式ではなく、固有のシステム・ベンダー選定の問題です。
失敗の一般化を誤ってしまうと、その先にあり得る可能性をシャットダウンしてしまいます。
例えば、「これは大きな改善だ!」と思って取り組んだ仕事が、終わってみると期待していたより効果が見られ
なかった。新しい試みを盛り込んだ企画が会議で通らなかった。
そんなとき、「改善活動にはあまり効果がないから、そんなことに時間をかけても無駄だ」とか、「どうせ新しい試
みなど認められないんだから、今後は上司に受け入れられやすい企画を考えよう」などと考えるようになってしま
ったら、自分の成長は止まってしまいますし、会社の発展にもマイナスです。
「失敗をした。だから同じ行動はしない」ではなく、「失敗した。この失敗の根本的な原因は何か。そこから学べ
ること、変えられることは何か。では次はどんな風に行動(挑戦)するか」と考えられるか。
この差は大きい。
自分が行動するときに改めて心したいと思いましたし、マネジメントする立場としてはメンバーがそう発想できる
環境を提供していくことが大切だと、肝に命じました。
(2011年10月20日)