第115回 「見ること」「見られること」の力



昨年、3カ月ほど入院。六人部屋のメンバー(患者)はあまり変わらず、看護師さんたちも多少の出入
りはあったものの、ほぼ同じチームでシフト。人間関係や仕事ぶりの定点観察ができて、なかなか興
味深い経験となりました。(もう二度と繰り返したくはありませんが。)

患者たちは十人十色。看護師たちに求められる仕事も様々。そうした組合せの中で日々の活動を長
期間見ていくことで、各人の本質に近い部分が見えてくるのだ、ということを、身をもって体験すること
ができました。

無愛想にみえて人の扱いがとてもうまい人、仕事の進め方がゆっくりに見えて、実は段取りをつけて
仕事をきちっと片付けていくことが得意な人、静かで頼りない感じなのに、いざというときに腹が据わ
って頼れる人、逆にいつもは理論的で冷静に見えるけれどパニックしやすい人・・・。そして、人に対し
ても、仕事に対しても相性がある、ということも見えてきます。

すべてではありませんが、多くの看護師さんたちの第一印象は、3カ月の間で大きく変わっていきまし
た。

病院での評価制度やマネジメント形態がどうなっているのかわかりません。広くない病棟で毎日顔を
合わせているので、お互いかなりの部分がわかっているような気もします。

しかし、もしここが大会社で、私は新しくプレイングマネジャーとして配属され、彼女・彼らをマネジメン
トし、評価しなくてはならないとしたら、第一印象や大きな出来事から受けた印象に引きずられ続けて
しまわないか・・・と考えてしまいました。(実際に、病棟でも本質的なものが見えてきたのは、結構時
間が経ってからでした)

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昔からラグビーが好きで、テレビ中心ですが国内外の試合をよく観戦します。当然、日本代表チーム
の動向は気になるところ。その代表チームは2011年に監督が交代して、力が格段に上がっていま
す。

また、代表を支えるトップリーグと呼ばれる社会人リーグの実力も底上げされている。ファンとしては
嬉しい限りです。

なぜ?と考えてみるに、その理由はいくつもあると思いますが、私がひとつ感じているのは、選手た
ちが代表監督に「見られている」という意識を強烈に持つようになったからではないか、ということで
す。

(あくまで、仮説ですが。その他の理由は『エディー・ジョーンズの監督学』に詳しく書かれていますの
でご興味があれば。)

代表の人選が、実力や経験、将来性を反映していて納得感がありますし、それまで評判がよかった
選手でも、良いプレーができていなければはずされます。そして、主要なゲームでは、現地で監督自
ら観戦している姿が常に見られます。

過去にできてしまった「評判」や「第一印象」を引きずり続けないから、頑張れば代表になれる。逆
に、ちょっとでも気を抜いたら選んでもらえない。そんな意識が、選手たちの実力を上げているのでは
ないか、と思うのです。

もちろん、人から見られているという外発的なモチベーションだけでは、本当の強さは形成されないと
いう面もあるでしょう。しかし、自分の努力の結果としての実力や強みを確実に見てもらっているという
信頼感は、人が活躍・成長していくためには重要な要素のように思います。


仕事の中で「人材の見える化」という言葉を使うようになって何年も経ちますが、改めて、その力の強
さと、逆にできていないときのリスクを感じているところです。

(2013年1月31日)
破壊と創造の人事

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