第121回 土砂降りの週末に学んだこと
少し前の週末、広島に行ってきました。広島にはずいぶん前に日帰り出張ででかけたきりで、一度もじっくりと訪れたことがありませんでした。
週の中ごろ、天気予報を確認すると、雨の予測。しかも暴風が吹き荒れる可能性があると。単に街を歩き回るだけではなく、宮島まで足を延ばして写真を撮りたいと思っていたので、土砂降りにだけはなってほしくない、と思いました。
出発当日の朝。外は予報通りの雨。しかも、ニュースでは、全国的に「爆弾低気圧」の影響を受ける危険がある、と報道しています。広島に到着し、宮島に向かう間に、雨脚はどんどん強くなっていきました。「何でよりによってこの週末に旅行を決めてしまったのか・・・」、宮島に降り立ったときには、正直あまり明るい気持ちではありませんでした。
それでも、傘を握りしめながら、美味しい牡蠣をたっぷりいただき、鹿を間近に見て、実際に大鳥居の前に立って見上げた頃には、開き直った気持ちになっていました。こうなったら雨の宮島を歩き回って、徹底的に写真を撮ってみよう、と。
本格的に一眼レフカメラを触るようになってからまだ一年足らずでしたが、雨の中での撮影というのは初めてでした。写真を撮り行く、というと、必ず天気の良い日を選んでいたからです。
まだまだ少ない知識を総動員して、いろいろと試していくうちに、思っていた以上に面白くなってしまい、雨にぬれた仏像や建物、花、水溜りの前に長時間留まって、飽きもせずにシャッターを切り続けました。(傍から見ると、かなり変なおばさんだったと思います。)
東京に戻って現像を始めると、今まで撮ったことがないような写真が多数撮れていました。もちろん失敗作の方が圧倒的に多かったのですが、それまでにない失敗にも出会い、新しい撮影の仕方も少しだけですが学ぶことができました。
始めたばかりの頃、写真を教えていただいたプロの写真家の方が、「自分が考える『いい時』『いい場所』(光の具合が良く、いかも被写体になりそうなものがあるところ)ばかりに写真を撮っていると、あるとき限界にぶつかる」とおっしゃっていました。
もちろん、そういう適時・適所で、最高の写真を撮れるだけの技術を身につけるのもの大事である。しかしそれだけでは、誰が撮っても同じような写真になってしまう。そこに、どれだけオリジナルな視点、新しい発見を組み込んでいけるのかは、自分では予想外の世界に身を置いてみて、そこでも作品になるような写真に挑戦することだと。
雨の中で撮った写真を現像しながら、先生のそんなアドバイスを思い出しました。
私は、今のポジションに就いて10年目に入り、一定の分野で合格点を取る知識や技術を身につけてきたと思います。その一方で、最近は大きなブレイクスルーを出せていない自分にも気づいていました。
入社当初は、「給与システムのない人事システム」という、当時はまったく異質だった価値を提供しようと、営業先では門前払いが続き、社内では他の部隊に”食べさせて”もらっている状態。そこで、何とかして状況を打破するために、正直半分ベソをかきながら、いろいろなことに挑戦したものです。
多くのことが失敗に終わりましたが、そのなかのいくつかが数年後に実を結び、今に至っています。
そこで、少しですが、仕事上で新しい挑戦を始めました。正直、居心地の悪さを感じたり、落ち込んだりすることもありますが、ここからまた新しい世界に足を踏み入れられると信じて、「雨の宮島」を思い出しながら、少し踏ん張ってみたいと思います。
(2013年5月30日)