第122回 見えない違いが生まれていないか 〜きゅうりとトマトから学んだこと〜
少し前、衝動的に、きゅうりとトマトの栽培セットを購入しました。種はもちろん、土や肥料もすべて用意されていている初心者向けのセットです。野菜を育てるのはまったく初めて。園芸に興味を持ったこともありませんでしたから、セットについてきたB5一枚程度の説明書だけを頼りに、種を蒔きました。
(ここから先は、園芸や家庭菜園に明るい方々が「ありえない!」「それは間違い」とイライラしてしまう素人話だと思いますが、ご容赦ください)
そもそも、種は最終的に育てることになるポットに植えるのではなく、別の植木鉢等で発芽させるということを知りませんでした。慌てて昔プレゼントで貰った植木が植わっていた植木鉢を引っ張り出してきて、きゅうりとトマトの種を土の中に。日当たりのよい窓際に置いておいたら、数日して早くも沢山の芽が出てきました。
説明書には、双葉しっかり開いたら、中から一番丈夫そうなものを選んで、その他のものは間引く。選んだ1本をしばらくそこで育て、本葉がしっかりと出てきたらポットに植え替える、と書いてあります。しかし、健気に土から顔を出した芽を摘んでしまうことに抵抗を感じ、双葉が開いてからしばらくの間、窓際の植木鉢を眺めていました。
そうこうしているうちに芽はどんどん育ってしまい、小さな植木鉢はさながら双葉の林のようです。一本一本がひょろひょろと頼りない。そこでやっと、このままだと総倒れになってしまうことを理解し、泣く泣く弱々しい双葉たちを間引きました。ただ、きゅうり・トマトとにも1本ずつ余分に残して、自分でプランターと土を買ってきて育ててみることにしました。
1週間ほどして、きゅうり・トマトともに1本ずつ、セットに入っていた土を入れたポットに植え替え。別のプランターを買いにいく時間がなかったため、窓際の植木鉢にはきゅうりとトマトの苗が一本ずつ残った状態となりました。
日当たりのよいベランダにおいた苗は、驚くほどのスピードで茎の太さを増し、上へ上へと育っていきました。じっと見ていたら成長する様が見えるのでは、と思うほどの勢いです。葉の色も濃い緑になり、たくましい厚さになっていきます。一方、プランターを待って窓際に置かれている苗の成長はとてもゆっくりしたもので、うすい黄緑色のはかなげな茎と葉を、エアコンの風に揺らしていました。
1週間もしないうちに、二者の違いは、同時に種から芽を出した植物とはとても信じられないくらいになってしまいました。そのあまりの違いは衝撃的でした。そこで、慌ててプランターと土を購入し、残りのきゅうりとトマトの苗を、ベランダへと移したのです。
しかし、プランターに移した苗たちは、まったく育ちません。枯れはしませんでしたし、少しだけ逞しさが出てきましたが、隣にある「セット育ち」の苗とは比較にならない貧弱さです。きゅうりなどは、大きさが10分の1程度。
単に、市販の「野菜栽培用の土」に植えて外に出せばいいということではなかったことに気がつきました。セットの土にはきゅうりやトマト育つために必要なものが予め配合されていたのです。今、土に肥料を混ぜて植え替え、その後の成長を見守っています。
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植物だから、置かれた環境によって生まれた違いがはっきりと見えました。でも、これが人間の様々な能力や精神的な強さといったことだったらどうなのだろうか・・・と想像して、ぞっとしてしまいました。
同じような環境からきた人たちでも、その後に置かれた状況によって、気がつかないうちに取り返しがつかないくらいの大きな差が出てしまっているのではないか。一方、だからと言って、やみくもに形式が同じ機会を与えたとしても、期待する効果が出ていない可能性がある。・・・考えさせられました。
実際のきゅうりとトマトの実の前に、少し「収穫」があった初めてのベランダ菜園です。
(2013年8月7日)