第140回 柔らかな力
ひょんなことから、趣味で参加しているグループのプロジェクトのリーダーを引き受けることになってしまいました。仕事から離れて、あまり緊張感を持たずにゆるゆると存在していたいと考えていたのですが、成り行きでそんな状況に。
プロジェクトマネジメントは、これまでの仕事で何度も経験している分野。自分なりのノウハウはあります。しかし、今回は、緩やかな目的(趣味)で集まったグループの有志が集まって、プロジェクトを成功させようとするものです。売上とか、達成数字といったわかりやすい目標がある世界ではありません。マネジメントの骨子はビジネス用のものを使うことができるとしても、メンバーの気持ちや満足感、一体感というものが、通常のプロジェクトよりは重要な位置を占めるでしょう。
実際に、スタート時点で、考えていることをできるだけやんわりと伝えたつもりが、私がプロジェクトの方向性をコントロールしているように思った人もいたようで、、、若干びっくり、という経験も既に。
(もちろん、先方もびっくりだったのだと思いますが・・・)
通常は緩やかなつながりのグループ、目的や目標も、緩やかに同じ方向を向いているものの、最終的には個々人それぞれのものがある。そんな中で、プロジェクトという時間を限ってひとつの目標に向かうという活動を実現する。そんな状況では、ある程度の強さを持って、物事を決めていく人がいないと、その場をぐるぐると回り続けてしまって、先には進めなくなります。私は、基本的に理論・理屈が先に立つタイプなので少しは役立ちそうです。ただ、今回のような状況で、あまりに強引な印象を持たれてしまうと、グループそのものの亀裂が生じてしまう危険性があります。
そんななか、プロジェクト体制を組んで、有志の方々の希望の聞きながら人をアサインしていこうと考えたとき、自分の補佐をしてくれる人として、「柔らかな力」を持っている人が必要だ、と思い至りました。
グループの中に、柔らかな力がある人だなあ、と感じていた人がいました。芯がない柔らかさではなく、芯はあるのだけれど、当たりが実に柔らかく、だから人が話を聞こうかな、と思ってしまうという印象です。彼に、是非自分の補佐をしてほしいとお願いしました。
多様な価値観や立場がある、先が白黒とはっきりした形で示されているわけではない場合には、前に進めていくための強い力と、芯のある柔らかい力が必要だと痛感します。
実は、会社の中でも、多様な価値観を持つ人たちが協同しようとしたときには、同じような状況が案外多いのではないか。意外に、こうした別世界での経験が、多様性に向かうときのヒントになりそうだな、とも。
今、評判になっている朝ドラ「朝がきた」の主人公のモデルになっている白岡朝子氏は、「みんなが笑って暮らせる世の中をつくるためには、女性の柔らかな力が大切なのです」という言葉を残しているそうです。白岡氏は、2つの力を一人の人間の中に持っていたがゆえに、激動の時代、男女平等という概念もないなかで、大きな業績を上げたと見ることができるのかもしれません。
白岡氏のようなスーパーな人物がいない場合、こうした2つの力を、チームで担っていくことになるでしょう。その成功には、大前提として、それぞれの力を持つ人同士が、上限関係ではなく、対等に、お互いをリスペクトし合うことが重要です。実は、二つの力を揃えることもさることながら、この関係性を作り、保ち続けることが一番難しいところなのかもしれません。明示的に強い力が、どうしても勝ってしまいがちですから。
さて、私としては新しいタイプの挑戦。意外な挫折や学びがあって・・・楽しんで取り組んでいます。
(2015年11月25日)