第144回 ところで、当然と思っていたことに、本当に間違いや見落としはなかったか
先日、とても慌ててベッドから飛び起きました。
その日は早朝の新幹線に乗らなくてはならなかったので、いつもよりかなり早い時間にスマートフォンのアラームをセットしていました。はっと気がつくと、カーテンの隙間から明るい光が差し込んでいるではありませんか。。。「もしかして、アラームが鳴らなかった??」、背中に冷や水を浴びせられたような気分でスマホを手にしました。「訪問先にどう申し開きしようか・・・」と。
結論から言いますと、それはアラームが鳴る5分ほど前の時間でした。日が長くなっていたので、思ったよりも日の出が早かった、ということでした。
ほっとしてベッドに倒れ込んで天井を見つめながら、自分が、そもそもスマホが示している時間を100%信じていることに気がつきました。例えば、実はスマホの時計が壊れてしまっていた、もしくは大幅に遅れていたとしたら、私がセットした時間に正確にアラームが鳴ったとしても、アウトなんだ、と。さっそく起き出して、リビングの時計を確認しました。
第二次世界大戦中のこと、ハンガリー出身の数学者であるアブラハム・ウォールドは、アメリカ軍から、爆撃機の生還率を改善するために、何ができるかを尋ねられました。彼は、爆撃から帰還した機体の弾痕の位置を調べることで、防弾装甲の追加に効果的な部位を調べることにしました。
すると、弾痕は機首、胴体、両翼に集中していることがわかりました。
普通に考えれば、機首、胴体、両翼の強化が俎上に上りそうです。しかし、ウォールドは、その判断の決定的な間違いに気がつきます。彼が調べたのは生還できた機体群であって、生還できなかった機体は一機もなかった、ということです。
機首、胴体、両翼に多数の弾を受けても、多くの爆撃機は生還している。そうした機体は、操縦席と尾翼への被弾は少ない。つまり、操縦席と尾翼に多く弾を受けた機体は戻ってこられなかった可能性が高い、ということです。ウォールドは、それらの部分に防弾装甲を追加を提案しました。
私の含めて多くの人は、一旦思い込んだことを土台にして動き出してしまうと、自らの足元の危うさを疑うことを忘れてしまいがちのように思えます。
「ところで、当然と思っていたことに、本当に間違いや、見落としはなかったか」こんな一言を常に頭に置いて、時々に引っ張り出しては、自問していきたいと思います。
参考にさせていただいた書籍 『ワーク・ルールズ!』(ラズロ・ボック/著)
(2016年6月7日)