第150回 自分の失敗や弱さに、痛みをもって向き合えるか
今、気になっているスポーツ選手がいます。卓球の張本智和選手です。
中国から日本に帰化した元卓球選手の両親の元で卓球を始め、14歳のとき歴代最年少で日本選手権の優勝を果たしました。
そんな張本選手が、先日の世界選手権の団体戦で、痛い敗戦を喫し、日本は6年ぶりにメダルを逃してしまいました。
その後のインタビューで、悔しさを滲ませながらも「この悪い経験を良い経験に変えていきたい」と言っていたのが印象的でした。
この張本選手、日本選手権に優勝する前に、世界で戦う中でその壁に阻まれて、同じように悔し泣きをし、弱点を克服するための努力を重ねて日本選手権の優勝を獲得しています。今後に期待しています。
同じく14歳で華々しくデビューした藤井聡太七段。小さい頃、将棋の試合に負けると悔しくて火がついたように号泣したと言われています。7、8歳の頃、谷川九段と飛車角落ちで対戦する機会があった際、
イベントで時間が限られている中、詰むのに少し時間がかかりそうだったので、谷川九段から
「ここで引き分けにしよう」と提案されたことがあったそうです。その言葉
を聞いた瞬間、その場で将棋盤を抱え込んで離さず、号泣したとか。
彼らが凄いなと思うのは、これほど若い(小さい)頃から、「○○が悪かっ
たんだ」 「×××じゃなかったらよかったのに」 といった言い訳に逃げないで、自分の弱さや悪かったことと、痛みをもって向き合っていること。
自分のキャリアを振り返ってみても、華々しく見える成功よりも、手痛い失敗、がけっぷちの苦境を経験したことが、結果的に血と肉になっています。
(張本選手や藤井七段のレベルとはかけ離れていますが。)
今年の初め、入社2年目の営業担当に、営業を受けました。自社の商品のことをよく勉強しているし、感じがよくて、そつもない。彼女と一緒に仕事をしてみたいなと思わせてくれる担当者でした。
しかし、いくつかの理由から、
彼女の会社には仕事をお願いしないことになりました。 余計なお世話だとは思いつつ、私が彼女を良いと思った点をすべて、同時にどうして最終的に選ばなかったのかについて、率直に伝えました。 悪くはなかったけれど、決定的に失敗した点もあったのだということが分かることが、彼女の成長の糧になるだろうと思ったからです。 これからもっと厳しい状況に直面することもあると思いますが、痛みをちゃんと乗り越えて、是非頑張ってほしいと願っています。
「ほめて育てる」ことの効用は確実にあると思います。厳しさがコントロールを失って変質してしまうと、今話題になっているアメフトの事件のような悲劇を生み出してしまうリスクがあるでしょう。
それを踏まえた上でも、自分がやってしまった失敗を、自分の責任としてあるがままに受け止め、悔しい思いや情けなさを味わった上で、それを乗り越えていくということを、若い人には是非逃げずに経験してほしい。上に立っている人は、それを正しく経験できる場を提供してほしい。まだまだ初々しい新入社員らしき人を見るたびに、そんなことを考えています。
(2018年5月23日)