第151回 苦境があったからこそ、得られること、見えてくること
バトミントンの桃田選手が復帰し、確実に世界ランキングを上げているという記事を読みました。
実践に戻った1年前には282位だったのが、現在は12位。(2018年6月5日時点)
桃田選手が2年前、先輩選手と違法賭博をしてリオデジャネイロオリンピックの代表から外されたことを、記憶している方は多いと思います。
その桃田選手が代表に復帰し、快進撃を続けているというのです。
その強さの秘密は、出場停止になってからの2年間、フィジカル面の強化をしてきたこと。
出場停止以前は、トップレベルの技術で世界第2位にまで上り詰めたものの、ラリー戦を嫌って決め急ぎ、自らミスをしてしまう場面も少なくなったそうです。そこで、試合に出られない間に、徹底的にフィジカルの強化に取り組みました。元々技術力の高い選手が、我慢比べのラリーに負けない力をつけたことで、今の結果に繋がっているとのこと。
また、ビッグマウスぶりで注目されることが多かった彼が、今は常にコートや観客に対して深々とお辞儀をするのだといいます。
「あの(休んだ)時間がバトミントン以外を成長させてくれたし、プレーにも影響していると思うので。・・・感謝の気持ちを忘れずに戦っていきたい」(桃田選手)
もちろん、彼が起こしてしまったことを肯定することはできません。しかし、その苦境が、彼をプラスの方向に変えるきっかけになったのは、確かです。そして、長い目でみれば、選手として上のステージに上がった可能性が高い。
もし、あのままオリンピックに出場して、ある程度の結果を残していたとしたら、彼は選手としてどうなっていたのか。フィジカルが課題と言われても、この2年間のように謙虚に地道にトレーニングを続けて、今のような強さを手に入れることができたのか。周囲への感謝の気持ちを持ち、それを表現することができたのか。難しかったのではないかと思います。
私自身、昨年から今年の初めにかけていくつかの苦しい状況があって、自分に期待されるだけの結果を出しきれないという状態から抜け出せずにいました。しかしそこで、どれだけ周囲に助けられてきたのか、強い実感を伴って感じることになります。同時に、自分の強さは何なのかを真剣に考えました。
その状態にどっぷりつかっていたときには、時に絶望的な気持ちになりましたが、あの時をどうにか乗り越えたからこそ、今、素直な感謝の気持ちを持ちながら、信念を持って働くことができています。
人は失敗するし、思いがけないところで足をすくわれたりします。この状況から二度と抜け出せないのではないかと、すべてを投げ出してしまいたくなるときもあります。でも、もし今そんな状況にいるとしたら、周りに助けを求めながら、今自分ができることをほんの少しでも続けてみてはどうだろうか、と思います。私が、少し成長できたな、とか、こんな自分も悪くないと自分を好きになれたときというのは、
必ず、大きな挫折や失敗から這い上がったときの後だったからです。
桃田選手の記事を読んで、そんなことを考えました。
もちろん、できればこれ以上失敗はしたくないですし、あんな苦境にも陥りたくはありません。
でも、もしそうなってしまったら、大きな意味でチャンスだと考えられる自分でいたい。そして、そこに陥ってしまった人がいたならば、その復活を助け、受け入れられる自分でいたいと思った次第です。
参考記事:「桃田『感謝』の快進撃」日本経済新聞2018年6月5日
(2018年6月14日)