- 戦略的人事にITを活かす - 人材・組織システム研究室
今回は、先日参加してきたコンファレンスで考えさせられことについてお話させていただきます。
先月の27日・28日に、ビジネスインテリジェンス(Business Intelligence)をテーマにした、ガートナーリサーチ社主催のコンファレンスに参加してきました。
ガートナーリサーチは、ご存じの方も多いかと思いますが、米国に本社を置く、IT分野の調査・助言を行う企業。
ビジネスインテリジェンス(Business Intelligence)とは、ビジネスにおける意思決定の高度化と迅速化を支援する情報システムの総称と言われています。(Wikipediaより)
今回のテーマは、情報システム部に向けて、BI分野の成功事例・トレンドを紹介していく、というものでした。
私は、「人事とIT」をテーマに活動しているのですが、最近かなり「人事」サイドにウエイトをおいていたなあ・・・という反省と、
これから「人事とIT」を考えていくにあたって、「BI」はキーワードになると考えたため、2日間のコンファレンスにできる限り参加してきました。
当初、あまりにIT寄りの話になるので、このコンファレンスのことは当メルマガでご紹介することはないかな、と思っていたのですが、
「人事にITをどう活用していくか」について、今後キーワードになる言葉があったので、ご紹介したいと思ったのです。
それは、
「Don’t ignore the business」
オープニング講演での、ガートナーリサーチ社のバイスプレジデント兼最上級アナリストのドナルド・ファインバーグ氏の言葉です。
BIの導入は多くの場合、高度なシステムの知識が必要となり、情報システム部主導で導入されることが多いそうです。
そこで最近散見されるのが、「お金と工数をかけて導入したけれど、使う部署・タスクが限られている、もしくは実質活用されていない」ということ。
ファインバーグ氏は、
「情報システム部の人たちは、『われわれは、最高のBIツールを導入した!』と胸を張ります」
「しかし、私が、『ビジネスと十分コミニュケーションをした上での導入ですか?』と聞くと、多くの場合は『No』なのです。」
という自身の経験を話したあと、
「Don’t ignore the business」 と。
システム導入にあたって、ビジネスを無視してことを進めるな、といったニュアンスでしょうか。
これを、
「情報システム部」→「人事」
「BI」→「人事情報システム」
と考えたときにも、そのまま当てはまってしまうのではないか、と思ったのです。
人事情報システム導入のお話になったとき、経営層の方とお話させていただくことがあります。
そのとき必ずお伺いするようにしているのが、
「今の人事情報システムを、定期的にご覧になっていますか?」
ということです。
要因計画を立てる際、過去から現在に至る人数の推移、部門滞留年数、等級滞留年数などの数字は利用されているようですが、
それ以上のこと、例えば、
「5カ年計画に対して、今後どのような採用・教育が必要なのか」とか、
「離職率が上がる傾向の原因」
といった課題に対して、データをベースとした検証ができる状態になっているか、といえば、多くの場合が Noなのではないかと感じています。
また、
「人事情報システムが導入されて、現場のマネジャーは喜んでいますか?」
といった問いに対しても、最初にいただく反応の多くは、「??」だったりします。
人事情報システムには当然、従業員台帳を管理し、給与・賞与を間違いなく期日どおりに出すといった、業務サポートシステムとして重要な役割があります。
ただ、技術が進歩し、アウトソースといったビジネス形態も選択肢となるなかで、「人事のIT活用」と考えたとき、
「経営」と「現場」に貢献する、つまり「Don’t ignore the business」という発想が、重要になる、と感じています。
実際に今月から、「経営」「組織運営」「人材配置」「教育」といった「人材がかかわる課題」を横断的にシステム(IT)でサポートしていくプロジェクトを、あるお客様とスタートしました。
これは、まさに、経営が欲し、現場のマネジャーが助かり、従業員が充実して働くための仕組み(システム)づくりとなります。
このプロジェクトについては、何かの機会にご報告できればと思っています。ご期待ください。
(2008年6月13日)