第41回 行動と結果のつながりが見えることの底力

年商25億。
そして、2009年1月の売上は、前年対比2割以上の伸び。

今回は、今のご時世、なんともうらやましい業績を上げている組織の話から始めたいと思います。

それは、和歌山県紀の川市にある、「めっけもん広場」という、農産物直販所です。

農家の人たちが、毎朝収穫をした野菜や果物を直接運び込むという形で商品が提供されるこの直販所は、その新鮮さと安さで、車で1時間以上かけて買い出しにくる人たちもいる大人気ぶりだそうです。

例えば、そこに並べられていた朝収穫されたばかりの白菜は、旬の野菜ということもあって80円程度。普段都心のスーパーなどで買い物をしている者からみると、驚きの価格です。

それなら、この不況で好調でも当たり前でしょう、と思うかもしれません。

でも、この「めっけもん広場」のような、年商25億を超える売り上げを、右肩上がりであげている生鮮物直販所が全国各地にあるのか?

この直販所が今、全国の話題として取り上げられているくらいですから、やはりめずらしいことのようです。

この「めっけもん広場」は、小規模な農家が生き残っていくために、現地のJA(農協)が考えだし、運営している組織。

この直販所に野菜を提供している農家の人たちは、農作業中によく携帯電話を手にします。

携帯電話から、今朝、自分が陳列してきた野菜や果物が、いくつ売れているのかが逐次確認できるようになっているのです。

「●●さんの白菜、現在143個売れました」

といった具合です。

そこで、午前中に納品した商品のほとんど売れてしまったことがわかると、午後の商売のために、農家は畑から売れ筋の野菜をすぐに収穫して、直販所に向かいます。

ここでは、野菜を運ぶのも、直販所に野菜を並べるのも、すべて生産者自身。

そして、そこでの工夫や頑張りが、売上に直結していくのです。

そんなシステムをもった直販所を開設してしばらくすると、会場が開く前から、野菜や果物を持った農家の人たちが列を作って並ぶようになりました。

自分の商品が売れやすい場所を確保するためです。

通路の角を目指していく人、照明が良く当たる棚を確保する人。

それぞれの仮説を持って、収穫したての商品を丁寧に並べていきます。

中には、他の農家が栽培していなかった新しい野菜を作る人も出てきました。そこには、どうやって料理をしたらいいか、という手作りの説明書とレシピも添えられています。

一方、一般的な果物を生産している農家でも、自分たちの商品をよく知ってもらうためのラベルやメモを作るといった工夫をするようになりました。

こんな風に言葉にまとめてしまうと、「農業にもマーケティングの発想が入ったのね」といった表面的な話として理解されてしまうのではないかと心配なのですが・・

私がこの話を聞いたときに強く感じたことは、「自分の行動と結果のつながりが見えることの底力」、ということでした。

そのことを思ったとき、ユニチャームで行われているという、SAPS経営のことを思い出しました。

SAPS経営とは、

S=Schedule
A=Action
P=Performance
S=Schedule

ということだそうです。

その実践として、週単位で目標を持ち、その達成のために30分刻みで予定を立てていく、というもの。

この話をすると、「そんなの窮屈だ」とか「私にはできない」という反応を受けるのですが・・・

そこで、実際に、週の目標を立て、それに対して私は30分毎にどんな活動をしているのか、ノートに書き出してみました。

淡々と記録をしてみると、思いの他、目標とは直接関係ないことに時間を割かれていたり、簡単にできると思ったことが想像以上に時間を取っていたり、いろいろな発見があります。

そして、今自分がここでやっていること(例えばこの原稿を書いていることもその一つですが)が、ビジネスにとって何になっているのかに、自然に自覚的になっていることに気がつきました。

すると、これにはそんなに時間をかけてはいけないから何か工夫が必要だ、とか、今後続けていくのであれば他のメンバーにやってもらった方がいい、など、アイディアが課題が見えてくるのです。

そして、行動につながっていく。

これは、日々の個人の話ですが、組織として、企業として、そうした「つながりが見える」仕組みができているのか、と考えると、人や組織のマネジメントという観点から「YES」と言えないケースが多いのではないか、と思いました。

「めっけもん広場」の話を、農業も通常のビジネス感覚に追い付いてきたんだ、農業にもマーケティングの手法が有効なんだ、と一歩引いて、批評家めいた感想を持つことは簡単ですが、

本当に「行動と結果のつながりが見える」仕組みを地道に作り上げ、確実な成果を上げているという視点から、

自社や自組織では、これほどのフィードバックの仕組みと成果を出せているのだろうかと振り返ってみると、逆に学ぶことが多くあるのではないかと思った次第です。

「自分の行動と結果のつながりが見えることの底力」

単純で、これまで何度も耳にしてきたようなフレーズで、「当たり前じゃない」と、なんとなくできている気がしてしまいがちですが、その力を生み出すための情報と仕組みを、人事が提供できているのか。

みなさんはどう考えられるでしょうか?

今回参考にさせていただいた情報

「生活ほっとモーニング」(NHK第一)
2009年3月12日放送 「不況ニッポンを元気に(2)“スーパー農村”
に学べ」 

(2009年3月18日)

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