- 戦略的人事にITを活かす - 人材・組織システム研究室
「100人中1人か2人でもオタクを採用した方がいい」
「独創的なものを生み出すのは、口八丁手八丁の人ではなくオタク的人材なのです。」
これは、生物学に関する書籍としては異例のベストセラーになった、『生物と無生物のあいだ』の著者でもある、福岡伸一氏の言葉。
(本題とは関係ありませんが、『生物と無生物のあいだ』は興味深い本でした。)
「オタク」という言葉に対するイメージは人それぞれであるかと思いますが、ここでは「ひとつのことを何十年も好きでいられる人」として使われています。
「真の創造性がわかるには時間がかかります。昨年ノーベル賞を受賞した下村脩氏が、そのいい例です。効率主義のもとに、1カ月、半年、1年と分節化した時間の中で価値をはかるのはやめた方がいい。」
「すぐに役立つ人材だけを囲い込もうとするのは一種の効率化ですが、効率を無視したところでオタク社員を育てることも必要です。」
皆さんの会社では、こうした人を育て、評価する文化があるでしょうか?もしくは、自分自身がマネジャーとして評価することができるのか?
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「企画会議や打ち合わせに出たとします。会議では発言しない者には存在価値がない、とよく言われますよね。でもやっぱり、発言しない人も出てくるわけです。それが私のような人種です。自己主張のぶつかり合いの中で、委縮してしまいます。」
これは、以前にも紹介させていただいた、25万部の発行部数を持つ「ビジネス発想源」(日刊)というメールマガジンの発行者であり、マーケティングコンサルタントとして活躍されている弘中勝氏の話です。
こういった人は、
「趣味のことや出身地のことなどちょっとした話題を突くと、驚くほどいろんな意見やアイディアが出てきたりします。」
「コミュニケーション能力はないけれども、引き出しはめちゃくちゃある、という人なのです。」
「こういう人から話を引き出すのは、とても貴重です。これまで誰も引き出していないからです。」
弘中氏の話自体は、ここから「本当のコミュニケーション能力とは?」
という話につながっていくのですが・・・・
福岡氏の話を読んでから「会社にとって必要な人材とは?」と考えていた私は、そもそも、この部分でひっかかってしまいました。
多くの企業の中で、会議では発言しないタイプの人たちは、「内向的」「意見のないやつ」「コミュニケーション能力に問題あり」「積極性に欠ける」といったネガティブな評価を受けて、ないがしろにされているケースが多い気がする。
少なくとも、私はそうしたジャッジをしがちだったし、これからもしてしまう可能性が高い。
それは間違いなのか、それとも組織で動くためには正しい(もしくはやむを得ない)選択(判断)なのか、と。
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2つの話をなんとなく悶々と考えていたとき、最近の出来事をふと思い出しました。
あるビジネス雑誌を読んでいたときのこと。
新しい発想でビジネスを成功させている起業家が紹介されていました。ビジネスモデル、マネジメントの仕方など、大変興味深く、その記事を一気に読んでしまいました。
と、その人の名前が何か気になります。どこかで見たことがある気がするのです。そこで、記事についている写真をもう一度よく見てみました。
私はその人のことをおそらく「知っている」ことに気がつきました。
ただ、そこに出ている人と、徐々に思い出してきた「知っている人」が、感覚としてまったく一致しません。そこで、Webなどでその人について書かれている記事やブログなどを読み漁りました。
そして、やはり私の「知っている」人だと確信を持つにいたりました。
その人は、大学の同級生で、学部は違うものの、一時期同じサークルに属していたことがあったのです。
そのときのその人の印象は、「おとなしい人」「あまり積極的に意見を言わない人」、言葉は悪いですが「印象の薄い人」。
そして、気がつかないうちに、サークルから距離を置いていました。正直、それがいつごろのことだったか、思い出せません。
しかし、今、その人は多くの注目を集める企業を興し、成長させている。インタビュー記事を読む限り、私が大学時代にもっていた印象とは、遠く離れた人物として、私の眼の前に現れたのです。
ここからは想像ですが、熱にうなされたようにサークル活動に邁進し(当時は、「大学サークル全盛期」でした)、そこでのルールが学生生活のすべて!という人たちがイニシアティブを取っていく環境を、その人は少し距離を置いて観察し、自分の居場所ではないと判断したのだろう、と思います。
ここでサークルに熱くなっていた若者たちを卑下する気もありませんし、起業に成功したその人を神格化するつもりもありません。
ただ同質化のベクトルが強く働いていた組織にどっぷり浸かっていた私には、その人が秘めていた可能性にまったく気がつくことはできなかったのだ、ということに軽いショックを受けました。
そして、同じことを、今もやってしまっているのではないか、と考えされました。
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「オタク」にしても、「内向的」にしても、それらの言葉が持つネガティブなイメージにひきずられ、一般的で単一的な判断軸(例えば「効率的」など)で、長期的考えればとても大事なものを切り捨てているのではないか。
私は、人事にITをどう活用していくのか、企業の人材データをどう扱っていくのか、ということを日々考えているわけですが・・・・
上記のような視点をどう取り込んでいくのか、諦めないで考える必要があるなあ、と思った次第です。
皆さんはどのようにお考えになるでしょうか?
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・インタビュー 領海侵犯 『オタク社員をもっと大事に』日本経済新聞 2009/6/29 朝刊
・『生物と無生物のあいだ』 福岡伸一著 講談社
・「ビジネス発想源」 弘中勝 (第1965回 「内向的な人」)
(2009年7月3日)