第49回 過去の人材データを溜めているだけでは意味がない

先週、「ヒューマンキャピタル2009」というイベントが終わりました。

ヒューマンキャピタルは、「企業の人材/組織戦略のためのイベント」という趣旨で、毎年開催されている人事向けの展示会です。

私たちも、そこで展示ブースを出し、セミナーを開催しました。今年で6年目になります。

6年間の変遷を振り返って思うところがありましたので、今回はそのあたりを共有させていただきたいと思います。

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私たちが最初に出展をした2004年当時の「ヒューマンキャピタル」の中心的な出展者は、人事関連のシステム(IT)ベンダーでした。

2006年から、「組織・人事コンサルティングのパビリオン」というエリアが開設されました。会場の一角に、こぢんまりと小さなブースが固まっていたのを思い出します。

この年、外資系の大規模人事情報システムベンダーが会場から姿を消しました。

2007年になると、「組織・人材マネジメントパビリオン」と名称変更したエリアが拡大され、大きめのブースを出す研修会社やコンサルティング会社が現れました。また、新たに「e-ラーニングパビリオン」も開設されました。

2008年には、人事情報システム業界の最大手と言われるベンダー数社が出展を見合わせ、その一方で「組織・人材マネジメントパビリオン」と「e-ラーニングパビリオン」セクションがさらに拡大。

そして、今年2009年。システムベンダーの出展数はさらに減り、「組織・人材マネジメントパビリオン」と「e-ラーニングパビリオン」がさらに拡大。

また、「ビジネス・トラベルパビリオン」というエリアが新たに設けられ、もはや、もともと人事システムベンダーが中心となっていたイベントとは想像できない展示会になっていました。

会場でお会いした他の展示者の方が(今年はじめて組織・人材マネジメントパビリオンに出展)、「ここは、案外システム会社の出展が多い展示会なんですね」と言ったのが印象的でした。「以前は、システム会社が中心だったんですよ」と言うと、とても驚いていました。

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さて、手元にある資料と記憶をたどってヒューマンキャピタルの過去6年を簡単に振り返ってみましたが。。。ここに、今システム(IT)が人事の分野に提供しているサービスの問題点が見えているのではないか、と感じました。

確かに、単に、「人事情報システムのご紹介です」と言うと、人が集まりにくいのです。

「もうウチにはシステムが入っていますから」とか、「ウチには必要ありません」とそそくさと去っていかれる方が少なくありません。

「下手に売り込まれたら困る!」という感じでしょうか。今や基本的な情報はWebで検索できてしまいますので。

ですから、企業はノベルティを配るなどして、多くの人の注目を集めようとします。(これが悪いと言っているわけではありませんので、念のため。)

しかし、一方で、一定の教育・研修関連のブースなどには、興味をもって自然に人が集まってくる。

この違いは何なのだろうか、と考えてみました。

それは、「人事情報システム」という分野が、「魅力」「価値」を提供してくれる、とは思われていないからでしょう。

ワクワクしないし、想像力をかきたてられない。“新しい世界”を開く手伝いをしてくれる気がしない。

であれば、緊急の必要がない限り積極的に見たいとは思わない。必要なら、Webで調べればいい。

そういうことだと思ったのです。

「人事情報システム」なんて、そういうものでしょう?という声も聞こえてきそうですが。。。

確かに、何でも新しければいいというわけではありません。

しかし、冷静に考えてみれば、「ヒト・モノ・カネ」と言われるものの、「ヒト」を扱うシステムです。会社の成否を決める大きな分野を扱っているということです。

そこには様々なアイディアがあるはずであり、それに基づいて仮説・検証が行われてしかるべき分野であるはず。

そんなダイナミックで重要な分野に対して、既存のシステムは、ITの強みを最大限活かすかたちで新しい価値を提供したり、既存の分野を深掘りしたり、人事に関わる人たちをワクワクさせたり、想像力を刺激するような提案ができていないのではないか、と思いました。

6年前と今を比較して、「人事情報システム」が提供するサービスの本質的な価値は、結局向上していないのではないか、ということです。

そして、そういったことがあまりに続くので、ユーザー側も、システムにワクワク感や、想像力をかきたててくれる“パートナー”としての期待などしなくなってしまっている。

そうした悪循環が、今の「人事とIT」をめぐる分野には起きているのではないか、と感じました。

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最近、経営者の方々と、「人材データの管理と活用」というお話をさせていただくと、

「過去の人事データをただ溜めているだけではまったく意味がない。未来予測に役立てることを考えなければ、システムの投資効果はでない。」

「組織を構成するメンバーからMAXどのくらいの売上が見込めるのか予測した上で、組織戦略を考えたい。」

「これからの人事にはデータ分析、因子分解が不可欠。経営者はデータを見ながら判断するもの。Evidenceをベースに話をしたい。」

「従業員の配置を目的と意図を明確に持って行ないたい。それがサポートできるシステムでなければ意味がない。」

といったことを、おっしゃられます。
(すべて、実際の言葉を引用させていただいています。)

では、こうしたことを、今の人事情報システムは経営者に約束できる状態なのか?

このあたりが、今後の人事情報システムが進化し、人事にとって、ひいては経営にとって魅力的なものになっていくためのカギになるように感じます。

将来的には、「人事情報システム」という名前では括れなくなっているかもしれません。

今回はシステム寄りの話になってしまいましたが、これからの人事にとって、人材データをどう管理し、経営と現場をサポートしていくのか、というのは非常に重要な分野になると思っています。

今の自社の人事データ管理と運用が、こうした経営の要請にこたえられるものになっているのか、一度考えてみていただければと思います。

(2009年7月17日)

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