- 戦略的人事にITを活かす - 人材・組織システム研究室
2010年5月31日、慶應義塾大学(以下慶大)野球部が春季リーグで11季ぶりの優勝を果たしました。その監督は、初のプロ野球出身の江藤省三氏。慶大野球部のOBでもあります。
2009年11月から始まるプロ出身監督の指導に、選手たちは期待感を膨らませたといいます。しかし、そこに待っていたのは、ひたすら繰り返される素振り、バント、ゴロ補球。期待の反動もあって、選手たちの不満は高まっていきました。
12月後半、その年の最後の練習で、江藤監督は選手たちに初めてフリー打撃練習を許しました。やっと自由に打てる!と打席に立った選手たちが経験したことは・・・監督が来る前とは比較にならない、自分たちの打球の伸びでした。選手たちは、身を持って、基礎の反復の大切さを知ったそうです。
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このメールマガジン「適材適所は幸せの素」は、今回でちょうど4年目を迎えることになりました。Vol.1を発行したのが、2007年8月29日。それから隔週での発行を続け、2009年8月には「人材・組織システム研究室」を開設。メールマガジンのコンテンツの一部として、その内容の紹介を始めました。こちらも少し前に2年目を迎えました。
そして今年の10月、対談のファシリテーターとしてご協力をいただいている楠田祐氏と共著で、書籍(仮題『破壊と創造の人事』)を出版することになりました。書き下ろした部分が多いのですが、メールマガジンや「研究室」で紹介した記事をアレンジした部分も含まれています。
そこで数年前に書いた文章を改めて読みなおして驚いたことは・・・・「私、文章ヘタ!」ということでした。以前まがりなりにもライターとして生活していたので、メールマガジンや「研究室」を始めたときには、「それなりには書けている」と思っていたのですが。。(うぬぼれでした)
ただ、ほぼ毎週のように、人に読まれることを前提とした文章を書き続けることで、こんな歳になっても少しずつは上達(あくまで自己評価ではありますが・・・)できるものなのだと正直驚くとともに、継続の力を改めて思い知らされました。
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江藤監督は1966年、慶大で華々しい戦績を残して、ドラフト3位で巨人に入団。その後、中日に移籍。結局、レギュラーの定位置を獲得できないまま、34歳で引退しました。
中途半端に現役生活を終えた感覚があった氏は、解説者の道を選ばずに、スコアラーに。その後、実績を買われて、大リーグの1A(日本で言えば「4軍」)にコーチ留学を果たします。
氏が驚いたのは、1Aの試合では、登板した投手が何点取られたとしても、予定したイニングを投げ終えるまでは降板させないことでした。「4軍」の目的は、試合に勝つことではなく、可能性のある選手をいかにメジャーリーグ(一軍)まで引き上げるか、だからです。
また、月に一回巡回コーチとしてやってくる元名選手たちは、欠点だらけの1Aの若者たちに、その欠点を指摘することなく、数少ない長所を見つけては、それを指摘して帰っていったといいます。欠点の矯正に時間を取られて選手を潰してしまうよりは、長所を伸ばして成長を促す方が得策だと考えられているようでした。
そして、こうした経験が、慶大野球部での指導に繋がっていったそうです。
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「ここに、ある従業員の性質を示した「レーダーチャート」があったとします。そこで測られているのが、「協調性」「柔軟性」「規範性」「論理性」「革新性」だったとしましょう。図をみると、柔軟性と協調性の部分が大きく凹んでいます。そして、革新性と論理性が高いのが一目でわかります。
さて、そのような特性をみたら、皆さんならどのように思われるでしょうか?
柔軟性と協調性が低いので、その部分を強化しなければならない、と反射的に思ったりしませんか?
少なくとも私は今までそんな発想で生きてきたと思うのです。
例えば中学時代。
国語・数学・理科・社会・英語。私の場合、数学と英語が苦手だったので、その2科目が強化科目でした。そこで生まれる感情は、『いつも何かが足りない私』だったと思います。」
これが、このメールマガジン「適材適所は幸せの素」を始めるにあたって2007年8月に書いた、名前の由来を説明した冒頭の部分です。そして、
「まず、一人一人が力を発揮できる場所(方法)で、更にその力を磨いてもらい有能感を持ってもらう、という発想で、人が働ける環境を提供していくことが、結局は組織としての力を支えて、組織としての成功につながるのではないでしょうか。
そして、人との比較の中で得た相対的な自信ではなく、自分の根っこに根ざしたものに支えられる絶対的な自信を持てたときに、はじめて素直に自分の弱みと向き合うことができて、次のステップへと成長していけるように思います。」 と書いていました。(・・・文章、ヘタですね)
「適材適所は幸せの素」の由来にご興味がある方はこちらからどうぞ。
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4年目を迎える時期に、偶然にも慶大野球部監督の江藤氏の記事に出会い、手探りで続けてきた活動を励まされるとともに、思いを新たにしました。(私はライバルのW出身なので、正直多少複雑な気持ちではありますが。)
この3年間、何をどれだけお伝えできたのか分かりませんが、4年目以降も、初心を忘れずに、コツコツと文章を書き、情報をお届けしたいと思います。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。(お気軽に、ご意見・ご感想などいただけますと大変励みになります)
「駆ける魂」 慶大野球部監督 江藤省三 上中下
日本経済新聞夕刊 2010年8月23日・24日・25日
(2010年9月2日)