第79回 知識や見識にとっての、「サプリメント」と「普段の食事」

あまり美しくない話で恐縮ですが。。。少し前、顔にブツブツが出てしまいました。確かに少し忙しかっ
たけれど、それほど不規則な生活をしていたわけでもない。ストレスが急に大きくなったわけでもない・・・
にもかかわらず、何故?

あるサプリメントを飲み始めた時期が、ブツブツ発生の時期と一致していることに気がつきました。

何となく疲れが取れにくいと思い、新聞広告に魅かれて新しい栄養補助食品(タブレット)を購入し、毎朝
飲み始めていたのです。

食品に興味がある友人に相談すると、「普段摂っている食事の中で、もっと自然に取り入れることを考えた
方がいい」とアドバイスされました。確かに。

その後、その摂取をやめてみると、ブツブツは出なくなりました。

ある限定的な目的だけで、急激に何かを吸収しようとしても、全体のバランスや他の様々な要素との関係を
無視してしまうと、結果的に得るものは少ないのだろう、ということを考えさせられました。

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深センという中国の都市。経済が発展している都市として新聞や雑誌で目にし、街の名前は知っていました
が、どんな街なのか、まったくイメージがありませんでした。

先日、中国で成功しているデザイナーであり、映画監督でもある劉高明氏のインタビュー記事を読む機会が
ありました。そこには中国の地方の村から深センに集まってくる人たちの生々しいストーリーが語られており、
新しい街であるが故の力強さと危うさが伝わってきます。

「急成長を遂げた中国の中でも、この街の発展は驚異的です。その発展を実現させた主人公は地方出身者
です。彼らは大金持ちになる、都市生活を送れる、中国ではできなかったことができるなど、いろんな夢を
実現するためにこの街に来ました」 (月刊アルコムワールド11月号より)

「深センの人口のうち、95%以上がよそ者という特殊な環境です。・・・北京や上海なども地方出身者は
多いですが、多少なりとも地元民がいますから、地方出身者の感覚も深センとはずいぶん違います。」(同)

「ただ、私がこの先ずっと住んだとしても、深センが自分の街だとは思えないでしょう。それはこの街
に住むほかの人にも共通することです。」(同)

その記事を読んだあと、深センで新しいビジネスを立ち上げたとか、大きなビジネスショーが開催されたと
いうニュースを目にすると、そうしたことの背景を少し想像できるようになってきました。
その正誤はわかりませんが、少なくとも、生きた情報として捉えることができるようになった気がします。

おそらく、「深センとは、香港の新界と接し、経済特区に指定されている。中国屈指のグローバル都市で
あり、金融センターとしても高い重要性を持つ」「中国本土の大都市の中では最も所得が高い(2008年)」
「犯罪率は高い」(Wikipediaより)というように、簡潔にまとめられた辞書的な説明を受けただけでは、
そんな感覚は持たなかったのではないか。

生き生きとしたニュースとして捉えることはできなかっただろうと思います。

辞書的な知識がサプリメントだとしたら、総合的な物語や具体的な経験が、普段の食事にあたると考えられ
るのではないか・・・と、ブツブツが消えかけた顔を見ながら、ふと思いつきました。


サプリメントを摂っているからといって、それだけで安心しているとどこかでバランスを欠いてしまう、
結局は大切な「何か」を逃しているのではないかと。


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巷に様々なノウハウを伝えるビジネス書が溢れています。できるだけ早く、効率的にビジネススキル
をつけるにはどうしたらいいのか。成功への近道はどこにあるのか、様々な角度から語られ続けています。

確かに、それらを取り入れることで得られるものは少なくないと思います。
しかし、それらだけに頼ってしまうのはどうかと、反省するようになりました。

実際に手さぐりで経験してみる(時に失敗もしてみる)。そして、一見自分の世界とは関係ないように
見える分野の良質な本を読み通してみる。そんなことをないがしろにしていると、いつかしっぺ返しが
くるように思えます。

今回「今週の書籍」で紹介した『ことばと国家』も、そんな思いから、15年くらい前に一回だけ読んで
いたものを、久しぶりに読み直したものです。最初に手にしたときには感じなかったことを、
たくさん得ることができました。

また、人事やシステムとは直接関係のない話が続くものの、思いがけない文脈から、ずっと抱えていた
問題意識や課題に対して、思わぬヒントを拾うことになりました。

即効性は期待できないし、期待はずれかもしれない。効果が出るのに長い時間がかかるかもしれない。
それでも、そうしたことの積み重ねがもたらしてくれる力を、もう少し見直す必要があるのではないか、
と思うのです・・・。

自分の知識や見識にとって、何が「サプリメント」で、何が「普段の食事」なのか。
そして、その「サプリメント」に頼りすぎて、「普段の食事」をないがしろにしてないか。
頭と心が、「生活習慣病」にならないように、真剣に考え、実行していこうと思う、今日このごろです。

ちょっと変わった話になってしまいましたが、、、
何かのヒントになれば幸いです。

今回参考にさせていただいた情報源

「有名デザイナーが撮り続ける『都市遊民』の心の居場所」
 月刊アルコムワールド11月号 

『ことばと国家』 岩波新書
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4004201756/infotecnos-22/ref=nosim
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