第81回 専門家の常識が生み出す「諦め」への道

乾燥地帯の水資源を確保するために、「砂漠に緑を!」という活動が、必ずしも常に良いことではない。
そう聞いたとき、どのように感じられるでしょうか。

総合地球環境学研究所副所長の秋道氏は、無条件に受け入れられている「常識的」な判断が孕む危険性を
指摘しています。

「樹木は地中深くの水分を根から吸い上げ、葉から蒸散させます。そのため乾燥地帯で植樹をすると、
裸のままの土壌から多くの水が奪われてしまうことがあります。地域にとって利用可能な水が、かえって
減少するという皮肉な結果を招きかねない」(秋道氏)

中国で進められている「退耕還林」。黄河中流域で、作物の栽培や放牧をあえて制限し、植林する政策です。
洪水の危険性を減らし、土壌流出を防ぐのが目的だそうですが、実は黄河の下流部分が干上がってしまう
「断流」の一因となっているとか。

自分が考えていた「常識」「良いこと」とかけ離れているために、正直とても驚きました。

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武道研究家である甲野善紀氏。書籍等も多数出ていますので、ご存知の方も多いかと思います。

私自身、4年ほど前に実演会に参加して、その術を目の当たりにしたことがあります。
体を動かさないように必死にうずくまる男性(巨漢に近い)をひょいとひっくり返してしまう、腕に自信がある
バスケット選手がどうしても甲野氏を止めることができない。その体の動きに舌を巻きました。

そうした動きがスポーツに応用できることが知られてきて、甲野氏はスポーツの専門家にアドバイスを
求められることが多いと言います。

サッカーではディフェンスを抜き、ラグビーでは100キロを超える選手のタックルを潰し、柔道では重量級
の選手との組手争いに負けない。
(ちなみに甲野氏は背は高くなく、決して大きな体ではありません)どうしたらそんなことが可能なのか。

しかし、甲野氏の動きを目の当たりにした選手たちの多くは、これまで自分たちが努力してきたことの延長
線上から大きく外れた甲野氏の動きをなかなか受け入れることができないそうです。

「否定的な反応をする人は、自分が理解できないことをされると、自分たちの沽券にかかわるとでも思うの
でしょうか。そのときは驚いて関心を持ってくれたひとにしても、その後もっと武術について詳しく知りたい、
と希望してくる人は1000人に1人くらいでしょう。」(甲野氏)

甲野氏がJ1のサッカーチームに指導を頼まれたとき、スター級の選手から補欠の選手まで30人ほどの
選手たちと競り合いをしたそうですが、誰ひとりとして氏を止められませんでした。

「常識のフレームワークにとらわれない身体の使い方をすれば、プロの有名なサッカー選手を相手にして、
一見、相手に有利、こちらに不利と思われる状況でも相手を制することができるということです」(同氏)

「専門家だと、不利な状況に対して、すぐに『これは不利なことなんだ。もうできない』となってしまうんですが、
そういう単純な反応は常識の世界の中にどっぷりつかっているため、不利な状態になったらもう何もでき
ないということを、条件反射的に学習してしまっているんですね」(同氏)

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専門性を身につけることが大事である。こつこつと努力を積み重ねる・・。
その結果、常識を身につけていく。ビジネスの世界で普通に起きていることが、大きなチャンスを最初から
潰してしまっている可能性も秘めているということに、自覚的であろうと思いました。

皆さんはどうお考えになりますか?


今回参考にさせていただいた情報源

日本経済新聞 2010年8月7日(夕刊) 
「水と付き合う 秋道智彌さんに聞く」

『賢い身体 バカな身体』 講談社 桜井章一・甲野善紀 著 
破壊と創造の人事

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