第83回 アラビア語ではアラビア数字は使っていない?

年末、父が入院をしました。幸いなことに回復に向かっていますが、手術をした直後数日は、全身麻酔をした
こともあり、うまく話ができませんでした。

「寒くない?」「水を飲みたくない?」という私たちの問いかけに頭を動かして応えるのですが、なんとなく
違和感がある。

「寒くない?」 コクン。首を縦に動かす。「水を飲みたくない?」 コクン。首を縦に動かす。

さて、父は寒いのか。水を飲みたいのか?私は一瞬わからなくなりました。しかし、周りの人は難なく理解して
いるようです。父は寒いと思っていなくて、水を飲みたくない、というのが正解でした。

どうして私が混乱したのか。私なら、同じ状況で質問されたとき、どちらも首を横に振るからなのです。
「寒くない?」と聞かれたら、「うん、寒くない」ではなく、「いいえ、寒くない」という風に。

これは英語でのYES/NOの返事を間違えないように苦労した結果が、日本語でも出てきてしまったということの
ようです。

英語圏で生活を始めた頃、例えばYou don’t feel cold, do you? などと聞かれたとき、寒くないから
Yes(その通りです)!と応えて、何度相手を混乱させたことか。

彼らの理屈では、寒くないなら、No, I don’t (feel cold)。 ですから、私のYESが一体何を指すのか、一瞬
理解できない。もしかすると寒いのではないかと想像する。そこでヒーターをつけようかと提案すると、今度は
寒くないからいい、と断られてしまう。いったい、私は寒いのか寒くないのか?!

第二外国語として英語を学ばれた方の多くは、こんな風に、否定形で質問をされた際、YES/NOどちらで応えるべき
か迷われた経験があるのではないでしょうか?

日本語では相手の言った内容に対して、「賛成(はい)」か「反対(いいえ)」か、英語では話題になっている
事柄について自分が「Yes」か「No」か、考えると混乱しにくいというのが今の私の処世術ですが。。。

父と無言の会話をしてみて、言葉の基礎になっている発想の違いがコミュニケーションに及ぼす影響について、
改めて考えさせられました。

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日本企業の「グローバル化」は、企業によって様々な形はあるものの、避けて通れないものとなってきています。
そこで、英語や中国語といった、ビジネスでの共通語になる言語の学習にますます力を入れている企業が増えて
いるようです。

それは非常に重要なことだと思いますが、それだけで安心していいのだろうか?とも思います。
なぜなら、グローバル化が進み、世界が狭くなればなるほど身の周りに起こり得ることは、これまで経験したこと
がないような多種多様な文化との接触だと考えるからです。

「国際化というのは、英語がペラペラになることでもなければ、海外旅行へ気軽に出かけられるということでも
ありません。例えばお菓子のパッケージにいろいろな言語が書いてある。わたしはそういうところに国際化を
感じるのです」 とは、スラブ語学者/言語学者の黒田龍之助氏の言葉です。

氏の著作の一つ、『にぎやかな外国語の世界』をひも解くと、そんな風に考える言語があるんだ、と驚かされます。

例えば・・・

タガログ語の人称は、日本語のように彼と彼女の区別はないが、相手を含まれている「私たち」と、相手が含まれ
ない「私たち」の区別がある。

ロシア語、チェコ語、スロベニア語には、1の複数(!?)が存在する。

アラビア語ではアラビア数字は使っていない。

ミャンマーでは、子供の生まれた曜日によって子どもの名前の初めに使う子音を決める慣習がある。
つまり名前を見ると何曜日に生まれたかがわかる。(ただしこの慣習は廃れてきているそうですが・・・)

ハンガリーでの氏名の表記は、「苗字+名前」で、日本や韓国と同様。

ロシアでは、男性と女性で苗字の語尾が変わるので、家族全員が同じ名字にはならない。
(「アンナ・カレーニナ」の夫の苗字は「カレーニン」)

等々。

もちろん、よほど語学の天才でない限り、これから世界に出て行って会う人たちが話す言葉をすべて理解するなど
ということは不可能でしょう。しかし、日本語や英語とはまったく異なった発想がベースとなった言語で普段の
コミュニケーションをしている人たちが多数いるのだ、ということに対する興味と実感値は、グロ―バル化していく
社会で生きていくにあたって、新しい視点を与えてくれるのではないかと思います。

そんなこともあり、今年はひとつ新しい語学を学んでみたいと思っていますが・・・その意思が1年続くよう
頑張りたいと思います。

今年も一年、どうぞよろしくお願いいたします。

今回参考にさせていただいた書籍

『にぎやかな外国語の世界』 黒田龍之助・著 白水社

(2011年1月27日)
破壊と創造の人事

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