第147回「できること」の数ではなく、「できないときに、何をどこまでできるのか」を知りたい
東京以外が拠点のため、東京の住まいは仮住まい。先日、本当に久しぶりに引っ越しをしました。
家族サイズではなかったからか、不動産会社の営業担当は、入社数年目
と思われる人でした。人当たりもよく、基本的なビジネスマナーもしっ
かりしていて、会社の教育ができているな、と感心していました。物件の引き渡しの際にも、引っ越しの大変さをねぎらうような言葉をかけてもらい、よい気分で引っ越しを終えました。
しかし入居後すぐに、入居前に受けていた説明とはまったくことなる事
態に見舞われることに。そのために、仕事の確認ができなかったり、遠方に暮らす家族との連絡が不便になるなど、思った以上に影響を受けました。
そこで、引き渡し後に保守担当になった人に連絡したところ、そういう件は営業担当に聞いてほしいとのこと。そこで、件の営業担当に連絡を
すると不在だったために、事情を説明して折り返し電話を欲しいとお願いしました。しかし、一日経っても返信がありません。
次の日の朝に再度連絡を入れても、半日以上音沙汰なし。さすがに堪忍
袋の緒が切れて、彼の上司を呼びだしてもらいました。結局、そもそも
の説明がまったく違っていたとはわかり、次のアクションとして何をし
なくてはならないのか、その上司は数時間で調べてくれました。
(結局、その問題解決するまでには、その後1カ月近くかかったのですが。。。)
問題がないとき、調子がいいとき、人は相手にいくらでも良い顔をする
ことができます。でも、その人の本当の真価が問われるのは、問題が起
きたときだ、という当たり前のことを思い出さされる経験でした。彼が
失敗と向き合って、その解決に奔走したとしたら、私の彼に対する印象
は180度違っていたでしょう。今後、そうしたことに気がついてくれる
ことを祈るばかりです。
私はIT業界にいますが、ユーザーが製品やソリューションを選定する
際に、RFI(Request For Information)やRFP(Request For Proposal)
という形で、我々が先方の要望に対して何が提供できるのか、できない
のかを問われることが多くあります。そこでの可否は、まず○×式で聞
かれることが多く、○の数が選考に影響するといわれています。そうな
ると、自社の製品やソリューションを購入してほしいベンダーは、書面
の上の○の数をできるだけ増やすことに腐心することになっても不思議
ではありません。
しかし、パッケージ型のサービス(=ある程度の定型を前提する世界)
の場合、対応する分野が各社の戦略(=独自性と変化を持つ世界)に関
わってくると、すり合わせなしに単に書かれた文章だけのやり取りで、
100%マッチングすることの方が奇跡に近いと思っていいでしょう。
戦略的な活用を目指すシステムを導入しようと思っているならば、でき
ないことがあり得ることを前提にする。そこで、できないことがあった
ときや、自分たちの考えていることとベンダーが考えていることが異な
ることがわかったときの具体的な対応力を、選考基準の上位に置く方が、
単に書面上の「できること」の数を数えるよりも、はるかに良いプロジェ
クトになると思うのです。が、残念ながら、なかなかそうした動きは見
られないようです。
働く一人の人として、人をアサインする立場の者として、顧客にサービ
スを提供する者として、「何ができるか」ばかりではなく、「できない」
「ダメだ」と思ったときに、どこまで何ができるか、という視点でも動
いてみたいと思います。
皆さんはどうお考えになるでしょうか。
(2017年2月1日)