- 戦略的人事にITを活かす - 人材・組織システム研究室
アメリカで人気の、「Family Guy」というTVアニメーションがあります。
若干乱暴な説明ではありますが、日本の漫画「天才バカボン」に似た設定(情けない父、育ちのよい母、ちょっと間抜けな兄姉と、頭の良い赤ちゃんと、しゃべる犬)で、もっと「毒」が強い感じ、と想像してください。
私も何作かみたことがありますが、一部の人たちには受け入れ難いだろうな、というエピソードや会話がちりばめられています。
あるとき、「この番組はけしからん」「公共の放送から締め出すべきだ」といった抗議をしているグループに、身分を隠した作者がインタビューをしたことがありました。
一通り抗議内容を聞いた後、作者が「例えば、どのエピソードが酷かったでしょうか?」と質問しました。すると、グループの人たちは顔を見合わせて、誰かが発言するのを待っている様子。よく聞いてみると、そのインタビューに参加した人の中で、実際の番組をちゃんと見たことのある人はほとんどいなかったそうです。
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私がオーストラリアに留学していた1990年代、ポーリン・ハンソンという政治家が、まるで「白豪主義」を彷彿とさせる主張を掲げて登場。一部の人たちの熱烈な支持を得て、国会の下院議員に当選しました。
(※白豪主義:1973年までオーストラリアで取り入れられていた白人最優先主義とそれにもとづく非白人への排除政策。)
当時は既に、「オーストラリアはアジアの一員か否か」といった議論や、「多文化主義を体現していくのだ」といった考え方が一般的になっていましたので、それに真っ向から反対する彼女の出現に多くの人が衝撃を受けました。
日本でニュースを聞いた私の両親は、「アジア人の顔をしているからといって、街で襲われたりしないの?」と、真剣に心配して電話をかけてきたくらいです。
私は、大学院でオーストラリアの移民政策を勉強していて、ゼミで小さな発表する機会がありました。
そのゼミは学部生向けのものだったのですが、テーマに興味があったので、指導教授に頼んで特別に参加していました。そのため参加者のほとんどが20代前後の若者たちでした。
オーストラリアでは、新しく国会議員に選出された議員が、議会で「Maiden Speech(初演説)」を行います。そこで自らの政治信念やその背景などと話すことが普通と言われています。
私は、かのポーリン・ハンソン氏が、いったいどんな初演説を行ったのか興味をもち、発表のコンテンツとしてそれを取り上げることにしました。
さて、私の発表の順番が来て、レジュメと、ポーリン・ハンソン氏の初演説のコピーを配りました。すると、教室に、ちょっとした緊張が走ったのを感じました。
多くの学生が、大学のゼミで、ポーリン・ハンソンの初演説を語り合うことに何の意味があるのか?と感じたようです。「明らかに黒いものを、改めて黒であると確認する作業をしても無駄なのでは?」といった感覚かもしれません。
中には、「こんなものは見たくもない」といった感じで、私のテーマ選定を軽く批判した人もいました。
あとで気がついたのですが、実は多くの学生が、演説の全文を詳細に読み込んだことがなかったようです。
全文をよく読んでみると、理論構成は案外まともです。
彼女には優秀なスピーチライターがついていましたから、この文面だけで「彼女の主張には問題はない」などと言うことはナンセンスですが、一定の不満を持っていた人たちが、惹かれていった感覚は体感できました。
もちろん、私が「アジア人」で、この問題については差別側ではなく、被差別側であるという立場だからこそ、取り上げることができたということは理解しています。(「白人」に属する人がこのテーマを選んで、「まともな論理」などと言ったら、批判に晒される可能性が高いので・・・)
いずれにしても、生の情報に当たること意義を感じた出来事でした。
(ちなみに、ハンソン氏はその後、他の諸政策内容の貧困さ、党の会計問題などがあり、実質政界から消えていきました。地方選挙への意欲は残っているとも言われていますが、復活は果たしていません。)
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「知の巨人」と呼ばれる、立花隆氏が、10年ほど前に東京大学で講義をしたときの話です。
ある学生が、「教養ってどうすれば身につけられるんですか?」と質問しました。
立花氏は最初、何を質問されているかよくわからなかったそうです。
しばらくして、学生が、「教養」という何かワンセットのものがあり、それらを身につけるための速習法のようなものがあるのだろうと考えていること、だからそれを教えてほしいと言っているらしい、と気がついて、とても驚いたとのこと。
そんな立花氏の言葉。
「現代史は生資料を読むことで学べ」
「何かに疑いを持ったら、いつでもオリジナル・データ、生のファク
トにぶちあたるまで疑いをおしすすめよ」
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朝から晩までビジネスの世界にいると、仕事に限らず、何事にもスピードを求め、できるだけ効率よく、間違いのない結果を出すことばかりを考えている自分に気がつくことがあります。
それを否定する気はありませんが、時々は、一歩立ち止まって、自分の頭と感性を使って、できるだけ生に近い情報・データ・物語などに触れてみる。
スピード・効率・正解を求める風潮が強くなればなるほど、逆にこうした態度が、価値を生み出すのではないか、と改めて感じます。
2010年1月29日