HR Professionals:人事担当者インタビュー
第14回 タレントマネジメントの目的は、事業の成功に求められる能力を持つモチベーションの高い人材をタイムリーに提供し、事業を成功させること
日本板硝子株式会社 執行役員 グループファンクション 人事部 人材開発・報酬部長 兼 アジア統括部長 梯 慶太氏
2006年、英国ピルキントン社のM&Aを機に、大きくグローバル化に舵を切った日本板硝子。その準備段階から深く関わり、同社のグローバル人事の責任者の一人として組織・人事制度統合に関わってきた梯氏に、日本企業の人事の急速なグローバル化を成功させるヒントをお伺いしました。
梯 慶太氏 プロフィール
1985年4月、日本板硝子入社。88年4月、本社人事部労政グループへ異動。1999年6月、NSG ホールディングUSA社(米国)へ出向。2002年4月、同社社長に就任。2004年頃より、ピルキントン買収プロジェクトに参画。2006年6月、ピルキントン社買収と同時に設立された統合推進本部(英国)を兼務。2007年4月、日本へ帰国、コーポレート人事部で日本の統合作業をサポートするとともに、HRダイレクター(東南アジア)を兼務。2008年8月、グループHR リソースディベロプメント&トレーニング ダイレクター。2011年9月、執行役員 BP事業部門 バイスプレジデント HR。2012年2月よりアジア統括部長。2013年9月よりグループ人材開発・報酬部長を兼務。
コツコツと英語の実力をつけ、人事部初の海外駐在のチャンスを掴む
― まず、梯さんがグローバル人事に関わるようになるまのでの経緯を、教えていただけますか?
私は、新卒で弊社に入り、最初は工場の情報システム部門に配属にされました。3年目に本社人事に異動、それから10年以上いわゆる労務で国内ドップリの仕事を担当していました。一方、入社前から海外志向があって、入社時の採用担当者にも、将来は海外で働きたいと伝えていました。実は後にその担当者が、人事部長になり、アメリカに駐在するきっかけを作ってくれることになるのですが、それが実現するのは10数年先になります。
国内労務で仕事をしていた入社5年目に、3カ月の米国短期語学留学を経験させてもらっています。人事に異動になる前に工場で初めてTOEICを受験、当時のスコアは610点でした。今では大したスコアでは無いのですが、当時の610点は超ドメスティック企業だった弊社の工場ではトップクラスだったため、工場では短期語学留学の推薦を簡単に受けることができました。この短期語学留学が一つのキャリア・ステップだったとは思いますが、勿論3ヶ月の短期語学留学で英語が上達する程度は多くはありませんし、留学から帰国した後も、再び国内労務の仕事に従事することになりました。それでもめげずにコツコツと英語の勉強を続け、海外駐在が実現する頃には、スコアは930点まで上がりました。
一方、弊社は1980年代の後半、米ケンタッキー州で、ピルキントンの米国子会社と日系自動車メーカー向けに自動車用硝子を製造・販売するジョイントベンチャー(JV)を立ち上げていましたが、90年代後半JVは業績が低迷していました。そのJV再建に関わったメンバーの一人が、先ほどお話した私の入社時の採用担当者でした。彼はJV再建プロジェクトで5Sなど日本の製造現場では当たり前だが米国では重要視されていなかった施策を導入するなど手探りで地道に再建に貢献していくなかで、自らの英語のコミュニケーション力不足を痛感、将来グローバルでM&Aを成功させようと思ったら、英語ができてグローバルな人事が分かる人材が必要になるという先見性のある考えを持つようになりました。
その彼がプロジェクトを離れ、人事部長として日本へ戻ってきました。彼は、私が以前から海外で働くことを希望しており、英語をコツコツ勉強していることを知っていましたから、英語ができてグローバル人事の専門性も併せ持つ人材の候補者として、私を選抜し米国赴任の道を切り開いてくれたのです。それが1999年のことで、弊社の歴史上人事部門から初めて海外駐在員を出すこととなりました。そこから8年間、私は米国で働くことになります。
― アメリカでも、人事のお仕事を?
アメリカでは人事の仕事に限らず財務・経理・税務を含む経営全般に関わり、3年後にはアメリカのホールディング会社の社長に就任しました。ただし、先の経過もあり、自分のキャリアの軸足は人事であるという意識はありましたので、経営という観点からの広い視野を持ちながら、グローバル環境での人事の専門性を高めていくことを意識していました。
被買収企業の仕組みを取り入れ、一気にグローバル企業へ
― 1999年から8年間ということは、ピルキントン社の買収準備の期間にアメリカにいらしたということになりますね。
私が米国に赴任するのと入れ替わりに、先のJV再建プロジェクトの中心メンバーが日本に帰り、2004年から2005年にかけて今度はJV相手の大元であるピルキントン社の買収計画が動き始め、その準備に関わりました。2006年6月に同社買収が成立するのですが、最初の一年は組織を統合しませんでした。その間「統合推進本部」という、組織統合後の計画を立案する仕事に関わり、アメリカとピルキントンの本拠地であるイギリスを往復する日々を送りました。
「統合推進本部」は、先のJV再建プロジェクトのリーダーだった当時の副会長が本部長で、当時の会長・社長と共に、ピルキントン買収を機会に、日本板硝子を真のグローバル企業にするという、かなり先進的な統合ビジョンを掲げていました。
ピルキントンを買収したときのオプションは2つあったと思います。ひとつは、ピルキントンはあくまで子会社として位置づけて、日本はそれまで通りのドメスティック企業を継続するというもの。もうひとつは、買収した側、買収された側という区別を超えて、真のグローバル企業を目指してグローバル企業としてのベストプラクティスを選択するというもので、最終的にこちらが選択された訳です。グローバル企業を目指すという視点で2つの会社を比べると、残念ながら当時の日本板硝子はまだまだ日本企業の仕組みしか持っていませんでした。一方、ピルキントンは、すでに30カ国近くでオペレーションをしており、グローバル企業としての仕組みが出来ていました。ですから、真のグローバル企業を目指すというビジョンを達成するために、被買収企業であるピルキントンの仕組みを多く利用することとなりました。
― ピルキントンの人事部門に触れて、感心したことはありましたか?
まず、人事の組織の中に、「ビジネスディベロップメント」という担当のディレクターがいましたので、彼女にその役割を聞くと、「インドなどの新興国の事業立ち上げを人事面でサポートするのだ」と言います。当時の日本の人事は海外事業所の人事機能はもとより国内の関係会社の人事機能にもほとんど関わっていませんでしたので大変感心しました。まさに、David Ulrichが提唱している「ビジネスパートナー」の典型的な実践と言えるものでした。今私がアジアの各国の人事部を直接統括するようになったのは、この流れから言うと当然と言えましょう。
次に、イギリス国内で「Ask HR」という組織をつくり、人事のオペレーションを徹底的に標準化・集約化、戦略立案とは切り離していたことです。各事業所には最低限のHR業務しか残さず、集約化可能な業務はすべて「Ask HR」で処理するというシェアードサービスセンターの仕組みです。人事部門でもコストのエフェクティブネスを最大限に実現することを、強く意識していることを感じました。日本でも今年1月に経理・人事・購買部門でシェアードサービスセンターを立ち上げましたが、この「Ask HR」の考え方に影響を受けたものです。
三つ目が、タレントマネジメントの仕組みです。まずジュニアマネジャー向けのED1とシニアマネジャー向けのED2という2つのグローバルマネジメント育成プログラムが確立されていました。特にED1はその原型が1970年代にさかのぼる歴史あるプログラムで、非常によく作り込んでありました。またSenior Executive Resource Group(SERG)と呼ばれるトップ層の後継者育成計画の仕組みも持っていました。ED2はこのSERGを目指す層のための育成プログラムです。
合併直後からこれらのタレントマネジメントの仕組みを導入 日本語による暫定プログラムの実施期間は4年だけ
― 基本的には、そうした仕組みを日本人にも導入していったわけですね。
まず2007年に私自らがED2に参加、その内容を実体験し、2008年から順次ED1/ED2に日本からも参加するよう働きかけました。ED1、ED2は英語で行われ、平均して世界12ヶ国から将来の幹部候補が参加するプログラムですから、それまでドメスティックな環境でしか働いてきたことのない多くの日本人にとっては、非常に厳しい内容でした。このため、日本では2008-11年の4年間限定で、日本語版ED1である「ED1 Japan」と、グローバル経験のないシニアマネジメント層にグローバル組織でのキャリア計画を考えてもらうための「SMW(シニア・マネジメント・ワークショップ)」を提供しました。
― 本当に4年で終わらせたのですか?
ED1 JapanとSMWは当時の英国人CEOに承認してもらったのですが、当初から数年経ったら止めることが条件でした。プログラムの評判は上々だったのですが、この約束もあったので4年で止めました。日本語プログラムという退路を絶つ意味もありました。
― ED1/ED2に参加するにもやはり英語力は重要になりますね。
今、全世界で27,000人の社員がいますが、日本人は17%に過ぎません。先ほど申し上げたSERGでは70のトップポジションを設定していますが、日本人は22%しかいません。もちろん、これまでと同様に日本国内の仕事がある訳ですから全員がグローバル人材になる必要はありませんが、グローバルでシニアなポジションを目指そうと考えるなら、英語力は必須です。
― 皆さん、必死に勉強されているのですか?
先ほど、私の入社当時のTOEICが610点で、それが当時工場でトップクラスだったと言いましたが、今は全社の平均が620点です(笑)。技術系社員が多い製造業ではまあまあの平均点ではないでしょうか?本社の事務系に限ると、平均点は800点を超えています。
グローバル化の鍵は 「外国人上司・外国人部下の関係」の形成
― 社員の方々の本気度が伝わってきますね。グローバル化を目指す他の企業でも、英語に力を入れて、外国人社員を積極的に採用したり、現地法人との社員交流を行ったりしていると聞きますが、なかなかうまくいかないことが多いようです。御社では何か工夫をされているのでしょうか?
苦労されている企業には、「外国人上司・外国人部下の関係を育成したい人材に与えていますか」?と聞いてみたいですね。いくらグローバルで人材を集めて英語によるリーダシッププログラムを実施しても所詮効果は限られています。有名な70:20:10の法則の通り、最も有効なのは「リアルプレイ(実務経験)」です。
グローバルリーダーとなるべき候補者に、外国人の上司や外国人の部下との関係を作りこめれば、実践で多くのグローバルマネジメントを学んで行くはずです。外国人上司からは、グローバルリーダーとしての模範行動やリーダーシップが学べますし、外国人部下を持てばパフォーマンス管理やコーチング力を含めたグローバルでのタレントマネジメント力が身に就きます。大変厳しい環境ですが、この経験を避けてグローバルリーダーは育成できません。
弊社の場合は、4人の社内取締役のうち2人が外国人、その下の4つのSBU長のうち、3人が外国人です。このため、直属の上司が日本人であったとしても、その上司、更に上の上司は外国人である可能性が高い。最終的にはどこかで日本人以外の上司と向き合わざるをえない状況です。また、自らの成果を上げるためには、部下にも外国人がいるとなれば、否が応でも真剣にタレントマネジメントに取り組むことになります。
「外国人上司・外国人部下の関係」は必ずしも海外駐在を意味しません。グローバル企業ではローカル幹部のガラスシーリングも排除しないと優秀な人材を魅了することができません。例えば私は今日本を本拠としていますが、日本以外に中国、ベトナム、マレーシア、英国に直属部下が計6名います。彼らと年に顔を合わせるのは数度だけで、日常的に電話や電子メールで遠隔マネジメントをしています。日本と異なり、人材をケアしないと離職する文化に住む人たちですので、常に彼らのリテンションリスクを意識し後継者育成計画を念頭に置く必要があります。日本で日本人だけの組織では得られない貴重な体験をしています。
― 合併直後から、真のグローバル企業を目指して人事のグローバル化をされて来たことがわかりました。しかし、合併前はとてもドメスティックな会社だとおっしゃっていました。あまりに急激な変化に対して、反発や不満などは出なかったのでしょうか?
なかったと言ったら嘘になりますし、今でも急激な変化に不満をもっている人はいるでしょう。それほど急激な変化だったのは間違いありません。ただ、2007年の組織統合後、当時の英国人CEOが行ったスピーチがあって、そこで、グローバル企業で日本のマネジャーに何が求められるのかを明確にしました。
● 40代、50代の社員は、経験をさらに積む一方、能力にギャップがある部分はトレーニングを受け、できれば英語を勉強してください。
● 20代、30代の社員は、もし経営トップを目指すのであれば、日本を飛び出しいろいろな事業運営を経験し、それも(単なる教育目的の派遣ではなく)実質的な仕事があるポジションで学んでください。
● もし現在の初級・中級管理職としての仕事に満足し、引き続き従事したい場合には、特定の専門分野を選択し、その分野の専門性を身につけてください。我々が世界の一流の企業であるには、どの部門で働いていようと、世界一流の仕事ができる専門家になってもらう必要があります。
● 最後に、ほとんどの上級職は国際的な仕事であることを忘れないでください。もし将来そういう仕事につきたいなら、英語は勉強しなくてはなりません。もし勉強したいと思うなら、人事部に相談してください。
● みなさん、我々にはすばらしいけれど取り組み甲斐のある未来が待っています。世界のトップになれば大きな誇りと満足を感じられますが、トップであり続けるためには常に変革し続けなければなりません。しかし、忘れないでください。その変革とはNSGのやり方からPilkingtonのやり方の変革ではないのです。今や我々は全員がNSGグループなのです。そして我々は特定の国の事業運営からグローバルで国際的な事業運営に変わろうとしているのです。
ここには、グローバルリーダーとして生きていくための重要なエッセンスがうまく盛り込まれていると思います。ひとつは、「実質的な仕事」から学ぶこと。彼は“Real Job”と言いましたが、先ほどの言い方をすると外国人上司と外国人部下との関係を形成する仕事。日本人だけの「グローバル」マネジメント育成プログラムや単なるトレイニ―として外国に派遣されても役には立たないよ、というメッセージですね。次が、「専門性」。どの年代やポジションにいてもグローバルで通用する専門性が不可欠だということ。例えば日本の人事や報酬の仕組みだけに精通しているだけではダメということです。そして、「英語」ですね。
実は、このメッセージは40代、50代の人たちにグローバル企業での覚悟を問うものでもあったと思います。上級職に就くためには英語を必須と言いながら、この層には「できれば英語を勉強してください」と言っているわけです。当時この層にはゼネラルマネージャーはいても、グローバルで専門性の高い人材は多くはいなかったし、自分を育成するための時間も定年を考えると決して長くはない。つまり、40代、50代の人がグローバル企業で上級職に就くためには、相当な覚悟が必要だと言っているわけです。
実際、その後の二度にわたる早期退職では50代中心に多くのマネジャーが会社から離れる決断をするに至りました。
後継者選抜では、「ポテンシャル」「パフォーマンス」「レディネス」を混同しないことが重要
― そういう厳しい状況を経て来た訳ですね。では、残った人たちの中から、どのように後継者候補を選抜し、育成していっているのでしょうか。
先ほど、SERGでは70のトップポジションを明確にしていると申し上げましたが、その中でも特に上位層に就く潜在性がある将来のリーダーを「ハイポテンシャル人材」と位置づけて、選抜・育成を行っています。
ハイポテンシャル人材の選抜には、縦軸にポテンシャル・横軸にパフォーマンスを置いて、それぞれを3段階にレーティングした9 BOX Gridを使っています。
ここで気をつけているのは、「ポテンシャル」を「パフォーマンス」と混同しないことです。
「パフォーマンス」とは現在のポジションでの業績を測るものです。一方「ポテンシャル」は将来の潜在性です。ハイポテンシャルと判断されるには、今のポジションで継続的にハイパフォーマンスを上げていることは前提になりますが、ハイパフォーマーが全員必ずしも将来の潜在性を持っているとは限りません。
― どうしても今目の前で業績を上げている人が良く見えてしまう、ということがありそうな気がします。何をもってポテンシャルを測っているのですか?
ポテンシャリティは、リーダーとしての素養・適性で判断しています。ここでは、アメリカのピッツバーグに拠点を置いてグローバル展開をしている人材コンサルティング会社、DDI社のコンセプトを活用しています。
リーダーの素養・適性は、「リーダーとしての素養(Leadership Promise)」、「自己開発志向(Personal Development Orientation)」、「組織適合性(Cultural Fit)」、「複雑な状況への対応(Mastery of Complexity)」の四つの要素を基に評価します。必ずしも科学的、定量的に測れるものではありませんので、あくまでも関係者による擦り合わせによる評価なのですが、少なくとも、評価に関わるラインマネージャーと人事がこのコンセプトについて共通認識を持ち、全世界に適用していることが重要だと考えています。
ここで気をつけなくてはならないのは、「レディネス」との区別です。「レディネス」というのは、特定のポジションに対しての準備状況のことです。我々の「ハイポテンシャル人材」選抜の最終目的は、複数のレイヤーから、最終的にCEOにまでなれる人材を選抜・プールし、育成するということです。ですから、「レディネス」をベースに考えてしまうと、特定のスキルや経験といったものに評価の重点が置かれる危険性があります。ハイポテンシャル人材の発掘にあたっては、まずは特定のポジションや今のポジションに囚われず、どういう分野でもリーダーシップを取れる「ポテンシャル」がある否かを判断するように心掛けています。
タレントマネジメントの目的は、ビジネスに必要な人材の層を厚くし、事業を成功させること
― 現在、どれくらいの「ハイポテンシャル人材」をプールされているのですか?
世界で約160人、この内日本で約30人です。ハイポテンシャル人材全員に、各ラインマネージャーによる個別のキャリア育成計画を作成するようにしています。キャリア育成計画には極力他の部門や地域に異動するようなアクションプランを盛り込むことを奨励、そのアクションの達成度合いをKPIとしてモニターしています。
「ハイポテンシャル人材」の選抜・育成は、弊社での「タレントディベロップメント」の大きな柱のひとつです。
ただ、これだけが単独で上手く行けばいいわけではありません。タレントディベロップメントの最大の目的は、事業の成功に必要な能力を持ちかつモーチベーションの高い人材をタイムリーに提供して事業の成功をサポートすることです。人材を惹きつけ、育成し、業績を管理し、適正に選抜し、後継者育成計画を作成し、キャリアを管理し、優秀な人材をリテンションし・・・・とこれらすべての要素が整合性をもってサイクルとして回っていくことが重要だと考えています。
― 最後に、今後、グローバル化に対応していく人事担当の方々、そしてグローバル化が進む企業で働く方々に、アドバイスをいただけますでしょうか。
昨今流行のようにグローバル人材の育成が話題になることは多いのですが、そもそも「育成」自体は目的では無く、目的は事業の成功です。ですから、今もしくは近い将来、どれくらいグローバル化への対応が必要なのかを冷静に判断して、進めていったらいいのではないかと思います。
弊社の場合は、日本市場の中に留まっていては生き残れないと判断して大型のクロスボーダーM&Aを行い、それを契機に真のグローバル企業を目指したわけです。そうで無い会社に、我々のプロセスをそのままテンプレートとしてあてはめようとするのは無理があると思います。あくまで自社としてどうあるべきなのか、をベースに考えて行く必要があるでしょう。
また「グローバル人材」を考えた時、必ずしも全員がグローバル人材になる必要はないと思っています。しかしながら、もし、個々人が真のグローバル企業でシニアなマネジメントポジションに就きたいと考えるのであれば、それなりの覚悟と努力が必要です。弊社でも、現段階で日本人がアジア地域の長になることはイメージしやすくても、それ以上のポジションに就くのには高いハードルがあると感じています。残念ながら、多くの日本人は国際ビジネス経験、グローバル企業での人材マネジメント経験が圧倒的に少ない。
そして弊社の社員によく言うことなのですが、自分のキャリアにオーナーシップを持つことが重要だと思います。会社にキャリアパスをガイダンスされるのを待つのではなく、自分が目指したいこととその進捗状況、社内だけでは無く社外を含めた立ち位置を常に把握して、自分のキャリアを自分自身で形成していってほしいと思います。
― 本日はどうもありがとうございました。
取材・文 大島由起子(当研究室管理人)/取材協力:楠田祐氏(中央大学大学院戦略経営研究科 客員教授)
(2014年12月)