失敗するシステム成功するシステム

「人事・給与システム」という言葉の功罪

ある人事部門で、人事情報システムを導入する、という話が持ち上がりました。それまで、人事関連データはすべてExcelで管理していたのですが、従業員が増えてとても対応できなくなってきていたのです。経営者からのデータに対する要求に応えるのも、ベテラン社員がどうにかスキルを駆使して対応している状況でした。

一方、給与システムは、パッケージ製品をカスタマイズなしで使っていました。給与担当者は、そのパッケージに特に問題は感じていませんでした。

そこで、お付き合いのあるパッケージベンダーに人事情報システムの導入を相談したところ、人事システムと給与システムは一体型がよいので、これを機会に給与システムも一新することを勧められました。

そこで、人事担当者は、他の「人事・給与システム」を販売しているパッケージベンダーを数社集めて、説明を聞きました。

話を聞いてみると、どの製品も、同じような機能を持っており、優劣つけがたく、人事担当者は困ってしまいました。そこで考え付いたのは、給与担当者に、どのパッケージの給与システムが一番使いやすいかを聞いて、彼女が一番いいというものに決めよう、ということでした。

当初、問題なく使いこなしている給与システムの変更をすることに抵抗していた担当者ですが、実際にデモを見てみると、A社のものが多機能で使いやすそうなものがあり、これならば、と人事担当者にその旨を告げました。

こうして、この会社はA社の「人事・給与システム」の導入を決めたのです。

この話を聞いて、「何が問題なの?」と思われたかもしれません。

しかし、そもそも、「人事情報システムの課題解決」でスタートした話が、ベンダーの一言で「人事・給与システム」の選考という話にすり替わり、最終決定ポイントが、「給与担当者が使いやすい給与システムであること」になっているということは、冷静に考えたら、おかしな話です。

「人事・給与システムは一体型がいいです」というのは、ベンダーサイドの理論です。もちろん、人事情報のマスタは一元化されている必要はありますが、同じ会社の製品でなければ不便で仕方ない、ということはありません。

しかし、一般概念として、「人事・給与システム」という言葉が認知され、提供サイドはその考え方をサポートする企業がほとんど、という中で、本質的な議論がおざなりにされてしまうケースがある、ということです。

そして、「人事情報システムは、機能が揃っていて、名前が通っていればどれもまあ同じ。あとは値段」といった認識のもとに導入をした結果、高価で巨大な給与支給システムになってしまう、というのが多くの企業で起こっていることなのです。

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