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人材マネジメントシステム設計者からの提言
人事が経営に資するために必要な、
「人材」×「仕事」×「組織」のデータ活用

■ 執筆者
インフォテクノスコンサルティング株式会社 取締役 兼 プロダクト事業統括 斉藤 由美氏

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3. 【人材の情報を経営の情報として活用していくためには】

「人材」「組織」「仕事」の情報が必要である。

 キャリア・育成を考慮して人材の適正配置を考えるときでも、中期経営計画に基づいて人員構成を考える際も、案件に適切なスキル・資格を要した人材を配置しサービスの質を確保しようとするときでも、人材情報だけでは不十分であることは、多くの人事担当者が気づいているところです。しかし、具体的にどのような情報が必要なのか、そうした情報を的確に把握しているのかについては、「何となくわかっているつもり」になっているケースが少なくないように感じています。もしくは、その重要性とそれに対する不足を感じていているものの、時間的、権限的、構造的な制約から、経営やビジネスの長からの依頼ベースでしか、情報入手・提供ができていないというケースもあります(A社は後者のケース)。

 今、実際にご支援をする機会が増えるなかで見えてきたのは、「人材」の情報に加えて、「仕事」と「組織」に関する情報が必要であろう、ということです。
企業の売り上げを支える仕事はどうなっているのか、そこに必要な人材は質・共に、短期~長期にわたって十分なのか、仕事を動かしていく組織・チーム体制は適切な
のか───。経営・ビジネスの成功のために、それらを関連づけて総合的に見ながら、戦略的に配置、目標や評価、育成、採用などの人事関連事項を決めていくことになるからです。


柔軟であること、確実であること。継続できることの重要性

 こうした判断・決断を支援するためのシステムが確実に活用され、成果を上げていくためには、「組織×仕事×人材」など、様々なデータ同士の有機的な関連づけができることが必須です。データを単体で見ているだけでは見えなかった世界が、異なる種類のデータを関連づけていくことで深く理解できるようになります。
それを実現していくためには、いくつかのハードルを確実に超えていくことが求められます。

どんなデータでも格納し、徹底して一元化をし続けられる「データベース」を構築できること
  ✔「組織、仕事、人材」の情報は、どれも変化し続けるものです。また、経営
   やビジネスでの判断に役立つデータは、それぞれの企業によって当然異なっ
   てきます。つまりシステムは、自社でどのような種類のデータが必要になっ
   たとしても、すべてを確実に、適切な形で格納し続けることができなければ
   なりません。ひとつでも入らない、入れられたとしてもあるべき構造にでき
   ないということがあると、思うようなアウトプットを実現することができな
   くなります。

集計や分析の軸となる「マスタ管理」を確実に継続できること
  ✔システム導入時におけるとても重要なタスクがマスタ設計です。特に集計や
   分析を行うシステムの場合、最初にしっかりと検討しておかなければ、運用
   後に「時系列比較ができない」、「複数システム間でマスタの整合が取れて
   いなかった」などの課題が残ることになりがちです。「人材」「仕事」
   「組織」それぞれのデータにどのようなタイミングでどのような変化が起き
   るかを想定し、場合によってはマスタ変換のしくみについても検討しておく
   必要があるかもしれません。
   特に指標を扱うシステムにおいては、各マスタを時系列に履歴管理できるだ
   けでなく、必要に応じてデータを適切な形に変換することなどを支援する機
   能が求められます。変換が的確かつ簡潔に実現できないと、中途半端な指標
   を確認するに留まってしまうリスクがあります。

必要なデータを確実に集める「データ連携」が用意されていること
  ✔自社の経営判断に必要となってくる「人材」「仕事」「組織」に関わるデー
   タは、様々な場所で発生、管理されています。基幹システムやプロジェクト
   管理システム、勤怠システムなどに加え、人事や部門がExcelで作成、保管
   している情報もあるかもしれません。
   したがって情報を統合する目的のシステムには、可能な限りデータ連携を自
   動化(または手作業でも簡易に取り込み)できる機能が必要となります。
   できる限り手作業を排除し(工数がかかるだけではなく、ミスの原因にも
   なる)、データを連携、入力できる仕組みは、見落とされたり、軽視された
   りしがちですが、継続的で確実な運用のための非常に重要な要素となります。

経営判断に求められるアウトプットや分析に不可欠な「データ変換・加工」が柔軟にできること
  ✔個々の管理に適したデータの形と、集計や分析に適したデータの形が異なる
   というケースは多々あります。特に「複数の情報を紐づけたうえで関連性を
   見る」といった要件では、2つの情報を統合して新たなデータ構造に格納す
   る、といった加工が必要となります。
   こういった追加要望は運用後も発生する可能性があるため、データの変換・
   加工がすべてテンプレートで固定されてしまっていては、未来に向けての仮
   説検証に耐えることはできません。課題発見・解決、経営・ビジネス判断に
   真剣に向き合う人たちの『ああでもない、こうでもない』という思考活動に、
   とことん付き合えるだけの柔軟性が必要です。

 ここで言及したような、「一元化」「拡張性」「柔軟性」といった言葉は、昨今安易に使われがちです。しかし、こうしたシステムで実現すべき一元化や拡張性、柔軟性は、生半可なものではまったく意味がないことを理解しておく必要があります。経営に資するシステムは、決して簡単に、簡易に構築できるものではありません。しかし、適切なシステムを選択し、本質的なサポートを得ることができれば、大きな実りをもたらすことが期待できるでしょう。

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■ PROFILE
インフォテクノスコンサルティング株式会社
取締役 兼 プロダクト事業統括 斉藤 由美氏

人事業務担当者として人事業務改革、人事情報システムの運用を担当。その後ITコンサルタント、人事コンサルタントを経て、2000年にITCを設立。人事にとどまらず、経営者が必要とするシステムを提案・構築できるコンサルタントとして活躍。Rosic人材マネジメントシステムの基本構想から設計に関わり、経営に貢献できる人材マネジメントシステムの発展に力を入れ、活動を続けている。