第40回 「枝葉の剪定」か「下草育成」か「土壌づくり」か

最近、ちょっと変わった、美味しいものを手に入れました。

オリーブオイルです。

(プライベートの料理談義ではありませんので、お付き合いください)

これは、日本人女性がイタリアで、無農薬・無肥料で育てたオリーブの木から採れた実で作られたもの。限定650本が、あっという間に売り切れたそうです。

私はラッキーにも、1本、手に入れることができました。

「アサクラオイル」と呼ばれる、この希少なオリーブオイルの生産を続けているのは、朝倉玲子さん。

イタリアの地にオリーブ畑を持ち、「自然栽培」でオリーブを育てる!という信念をもって、オリーブ栽培を始めた方です。

朝倉さんの農法では、基本的に環境を自然に保つ。ですから基本的に下草などを刈り込むことをしません。つまり、「草ぼうぼう」の状態で、オリーブの木を育てるのです。

(現在は必要なときには下草刈りをするそうですが、それもすべて機械を使わない手作業。最低限にとどめるようです。)

当初、「無農薬・無肥料」という挑戦に対して、イタリアのベテランオリーブ栽培農家の人たちからは、「不可能」「なんてバカな」と言われ続けたそうです。

最初は、朝倉さんの考え方に賛同した現地の仲間たちも、周りの声に気おされて、次第に朝倉さんの考え方と衝突するようになってしまいました。

そんな四面楚歌であった昨年の夏、イタリアは空前の猛暑に見舞われます。

オリーブ農家の育てたオリーブの木が軒並み壊滅的な打撃を受けるなか、朝倉さんのオリーブ畑だけは、オリーブの木が枯れることがなかった。

一昨年より少ない量ではあったけれど、健康なオリーブの実を収穫することができ、オリーブオイルを販売することもできた。

何故、そんなことが起きたのか。

それは、自然に生える下草が、土の温度と湿度を適度に保ち、人が外に立っているだけで熱中症になるというほどの猛暑から、木々を守ったからでした。

この話を読んで、私は、この「猛暑」と、今のビジネス環境がオーバーラップしました。

軒並み枯れかけていくオリーブの木々。その中にあって、ある畑では、少ないながらも元気なオリーブの実がなっている。。。

何か、今の状況に似ているように思えます。

では、この「下草」、そしてそれが育む「適度な湿気と温度を保った土」というのは、私たちの組織では、何にあたるのか。

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先日、知人に紹介していただいたセミナーがありました。

「ダイバシティ(多様性)」に関するセミナーです。

当メールマガジンの第37回で、人材の多様性を、企業の強みとするには、という観点でで「ダイバシティ」を捉える必要があるのでは、という話をしました。

(第37回 「強さの源としての多様性、と考えてみる」)

そんなテーマにつながるもので、「女性活用」や「ワークライフバランス」といった切り口から入るのではなく、もっと一般的な属性の多様性という観点からの話でした。

それをベースに、多様性を戦略としてマネジメントしていくにはどうしたらいいか、という話が聞けるとのこと。

是非聞いてみたいと思ったのですが、残念ながら、その日は予定が入ってしまい、参加できませんでした。

後日、知人にお話を伺おうと連絡をしてみると、このセミナーは集客が十分ではなく、キャンセルになってしまったというではないですか。

今、多くの企業が直面している(していかなくてはならない)問題のひとつとして、今いる人材(もしくは減少していく人材)で、いかに生産性を上げていくか、ということがあるはず。

そう捉えると、社内の多様性をいかに戦略的にマネジメントしていくのか、というのは重要なテーマとなりえます。

しかし、この不況のなかでは「ダイバシティ(多様性)」なんて、メシの種にもならないことに関わっていられない、と最初から決めてしまっている企業が多いということ・・・?

もちろん、そういったあたりについて、開催者の方々の遡及が不十分だった、と言う面ももちろんあると思います。

それにしても、多くの企業が、木の土の上に出ている、見えている部分だけの剪定やメンテナンスに集中してしまっているのではないか。

木の底力を長期的に保証していく土壌の状態を軽視し、それを守る「下草」を無造作に刈り取ってしまっている可能性はないか。

ふと、先ほどの「猛暑に枯れるオリーブの木」の話とオーバーラップしてしまいました。

これは、別に「ダイバシティ(多様性)」に限った話ではありません。

今、行っている施策は、オリーブの木の例に当てはめると、「枝葉の選定」をしているのか、「土壌づくり」なのか、それとも大切な「下草」の確保なのか。

そういった視点で整理してみる、というのは有効なのではないか、と思った次第です。

この整理と調整が、今後めぐってくる良い季節に大きな収穫をもたらし、次の苦境を乗り越える底力のある人や組織を作っていくように思えてなりません。

今回は、少し抽象的な話になってしまいました。

それでも、こんな時期だからこそ、地道に「本質」を追及することが大事なんじゃないか、と感じる今日この頃です。

皆さんは、どのようにお考えになるでしょうか?

今回参考にさせていただいた資料等

「アサクラオイル完成報告」(文・朝倉玲子)

(2009年3月6日)

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