- 戦略的人事にITを活かす - 人材・組織システム研究室
ある会議で、検査によって測られる行動特性について、何人かの方々とお話をしているときのことです。
人は、教育や研修で変えることができるか否か、という議論になりました。
基本的な対立ポイントは、
・ 人の基本的な行動特性は変わらない。
・ 人は、教育・研修を通じて変わることができる。
というものでした。
皆さんは、どうお考えになりますか?
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最近、ある心理の専門家の方の話を聞く機会がありました。
「人は変わることができるのか?」というのがそのときのテーマでした。
その方は、「残念ながら、人は変わることはできないんですよ」と言い切りました。その言葉を聞いた瞬間、怪訝な顔をした人は少なくなかったのではないでしょうか?
「それじゃあ、何のために勉強をしたり、人の話を聞いたり、訓練をするんだ。それらがばかばかしいことになってしまうじゃないか」と。
話は次のように進みます。
「すみれは、すみれなんです。薔薇がすみれになりたい、と思っても、絶対に薔薇はすみれにはなれない。人も同じことなのです。」
しかし、
「最初は種だった薔薇が芽を出し、それが伸びていき、やがて花を咲かせる。そういう意味であれば、人は変われるでしょう。
しかし、それは、本質が変わるのではなく、成長するということ。人は変わるのではなく、成長するのです。」
最初の議論に戻って、人の基本的な特性は変わらない、一方、人は教育や研修で成長という変化ができる、と考えてみました。
つまり、対立する立場ではないと。
以前のこのメールマガジンで、「元気を失った社員を、『元上司』はどうするか?」(第二十五回)という話を書いたことがあります。
人事異動で元気がなくなった社員を、会社にとっても本人にとってもいい状態にするために、元上司が取った行動についての話です。
そこでは、人の特性を最大限に生かした仕事をしてもらうことの重要性について考えたのですが、今回の話と重ね合わせると、
教育(ここでは企業の)の目的を、企業という舞台で、すみれにとって一番の花を咲かせるために、薔薇にとって最高の花を咲かせるためでのものである、と捉えてみる。
そのための最良の方法とは何か、と考えてみることが重要である、というひとつの方向が見えてくるのではないかと思った次第です。
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私が以前、コーチングの勉強をしているとき、つまずいてしまって、立ち止まってしまった考え方がありました。
「あるがままの自分を受け入れることが大事」
という考え方でした。
それまでの私は、自分の足りないところをリストアップし、それをひとつひとつ克服していくことが、日々頑張ることのエンジンになっていました。
ですから、「今のままの私を受け入れればいいのだ」と言われた瞬間に、どうやって次の一歩を踏み出せばいいのか、わからなくなって、しばらく無気力な状態になってしまったのです。
今、あの状況を振り返ると、おそらく、「すみれはすみれのままでいいのだ」ということと、「種のままでいていんだ」ということを、明確に分けて理解していなかったことがわかります。
「なんだ、種のままでいいのだったら、今までの努力は何だったの?」(そのときは、そういった言葉ではありませんでしたが)と、脱力してしまっていたというわけです。
そうではなく、私は「すみれ」だということを良い面悪い面まとめて正面からに受け入れて、その最高の花をさかせるために精一杯の努力をしよう、ということだと理解できれば、あんな無力感に襲われることはなかったでしょう。
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いよいよ4月に入りました。多くの方が新しいスタートを切ったり、新しい仕事、新しい人との関係といったものに出会っているのではないかと思います。
そんなわけで、今回は、自分の特性と頑張る方向性について考え、皆さんと共有させていただきました。
皆さんはどうお考えになりますか?
DVD 「Unplugged 遺書」 石井裕之氏 (フォレスト出版)
(2009年4月2日)