第二回 日本の人事の転換点 2  2008年(前後2年)

第一回目で、1998年(前後2年)に起きた、人事の「断層」について、考えてみた。 今回は、そこから10年を経た2008年(前後2年)に、「経営」「人事」「現場」それぞれで見られた変化、そしてこれから人事が直面していくであろうことを考えてみたい。

人事はどんな風に考え、活動していくことが求められているのか?

では、人事は今後、どうじていけばいいのだろうか?

まず何より肝に命じておかなければならないのは、人事はもはや、「労務管理」と「法令順守」だけを考えていればいい時代は終わった、ということだ。

「人事に求められる『マーケットイン』の発想」

これからの人事は、「マーケットイン」の発想が必要になってくると考えている。

例えば、社内研修。昔は、終身雇用を前提とした職能資格制度の階段を上がっていくためには、決められた研修を受けることが条件となっていた。だから、真剣に受講者の声を聞く必要もなかったし、そもそも受講者に満足してもらうという発想で研修を組み立てる必要はなかった。

しかし、そうした前提が希薄になり「アリバイ」としての研修の意味が消滅していくなかで、社員が戦力となっていくために必要な教育は何か、社員が受講したいと思う研修はどんなものかを、真剣に考える必要に迫られている。

更には、人材の多様化、働くことに対する価値観の多様化が進んでいる。研修担当者が机の前でじっと考えていても正解など出てこない。社内マーケティングをしなければ、本当に効果の出る研修はできないはずだ。実際に、社員一人一人のキャリアニーズに対応した教育研修を企画・運営しようという企業が最近増えてきている。

人事制度も然り。現場をわかっていない施策は結局定着しないし、結果を出せない。人事評価などは、現場から、「差をつけられるツール」としてネガティブに捉えられてしまいがちだけれど、それは、評価と育成をきちっとつなげて見せていないから。そのあたりも、人事が真剣に考えていくべきところだと思う。

「『エビデンスベース』のマネジメント」

もうひとつは、「エビデンスベース」のマネジメント。

取締役会議などで、執行役員以上の人たちは、それぞれの担当ドメインについてデータに基づいて報告をすることを求められる。しかし、人事や教育研修に関しては、発表するに値するだけのデータが出せないことが多い。せいぜい、「今年は採用を何人しました」という程度だったりする。だから、経営にとって「人は大事」でありながら、その担当部署である人事のプレゼンスが低くなってしまっている。

簡単にできることではないから今まで手つかずだったのだろうから、一朝一夕に実現できることではないかもしれない。しかし、「人事はアナログの世界だから、データや統計といったデジタルな世界は必要ないために弱いです」、という言い訳が通用する時代ではなくなってきてることを自覚する必要があると思っている。

「人事としての長期的視野」

最後に、人事として長期的な視野を持つこと。

最初に書いたように、トップが結構コロコロと変わることが珍しくなってしまったなか、人事としての長期的な視野が重要になってくると思う。

例えば、360度評価を導入しようとする。

人事にしてみれば、最低数年やって定点観測することで、その質を上げていきたいと思う。しかし、次の年に社長が変わってしまって、「今年は予算なし」とばっさり切られてしまうケースがある。だから、相談を受けたときには、最初の稟議書を書く時に、「最低3年の継続」を明記して承認してもらっておくように、アドバイスする。しかし、実際には当初の予定通り継続できず、そもそも目指していた目的を達成できなかった、という状態になっている企業は案外多い。

社長も人のことを考えているだろうが、人事のプロではない。人事のプロである人事担当者は、短期的な発想だけで動いてしまわないよう、常に長期的な視野を持つことが大切になってきている。

これから、若年労働人口は減っていく、外国人・女性という明確な多様性だけではなく、正社員男性の中でさえ、価値観の多様化が進んでいる。人事部が、どれだけ、人と組織のことを真剣に考える組織として活動していけるか。

これからの企業成功の大きな鍵を握っているのではないかと思う。

次回は、これからの人事担当者に求められるリテラシーについて考えてみたい。

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第三回 これからの人事 〜 求められる人事担当者像とは? 〜

第二回 日本の人事の転換点 2  2008年(前後2年)

第一回 日本の人事の転換点1 1998年 (前後2年)

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